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しりとり

わがままに蓋をしてばかりのあなたが
こっそりと握った私のおかあさんゆび

ふたり生きることに精一杯でした
帰り道にしりとりすることすら叶わなかった


あなたの毎日に私は何も残してあげられなかった
もっとおかあさんでいてあげたかった


小さな背中を優しくたたいて
眠りにつくまでそばにいるとか

ひんやりとした小さな足を
太ももに挟んであたためるとか

小さな指のささくれを痛かったねと
そっと撫でるとか


もう良いよ、と言われるまでしてあげたかった


いつのまにか大きくなったと思っていたけれど
あなたを覆うその殻はまだとても柔らかで
もう少しだけあなたの側にいたかった



おかあさん、しりとりしようよ
おかあさん、いっしょにねていい?
おかあさん、あったかいね
おかあさん、くすぐったいよ

おかあさん、そばにいて

何ひとつ叶えてあげられなくてごめんなさい


お誕生日おめでとう
あなたを遠くで想っています





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