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AM 1:00

「すっかり遅くなっちゃいましたね」
あくびを噛み殺しながら七原は後部座席の矢代に話しかける。

矢代も疲れた様子でぼんやりとしている。

「クア…ねっむ…。何時だ?今」
「もうすぐ1時ですね」

矢代はその答えはさほど面白くもない、といったような顔をしてタバコに火をつけた。

都心とはいえこの時間ともなれば街は静かだ。

窓をあけると心地よい風が車内に流れ込む。

「お前ってさ、真面目だよな。」

「え?真面目?俺が?」

思いもよらぬ言葉にバックミラー越しの矢代を七原は確認する。

「真面目だろ。だって今この通りには見渡す限り俺らの車しかいないぜ?なのにお前は律儀に赤信号だからってだけで止まってる」

その言葉には信号を律儀に守る七原のことをバカにするとか、からかうような匂いはしなかった。

「別に真面目とかじゃないでしょ」
少し笑いながら七原は言葉を返す。

信号が青に変わり、車はゆっくりと走り出す。

「いざとなれば例えば赤信号だったとしても止まりませんよ。」

いざってときねえ…独り言のように矢代が呟く。

「俺は社長を守んなきゃいけないんで。その為なら何だってしますよ。ルールを守ることも、その反対も。」


「そりゃ頼もしいな」
そう言いながら矢代は少し姿勢を崩して窓にもたれかかって目を閉じた。

七原は後部座席の窓をそっと閉め、反対に運転席の窓をあけてハンドルを握り返した。

眠らない街の静かな夜道を優しく力強く駆け抜けた。

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