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birthday

9月27日。
雨天とするには少し物足りないような曇天が何日間か続いていた数日間の隙間を狙って彼はこの世に生まれた。

空には綿を薄くちぎって放ったような雲がときおり薄くかかり、窓からは雨の間に草木が懸命に抱え込んでいた水を空へ帰すときの蒼い風が流れ込んでいた。


産湯の中で真っ赤な顔をして泣く姿を見て母親はこの子の持つ生命力に頼もしさを感じた。

どうかこの子が健やかであるように。

今日のような青空を見上げて穏やかであることを喜べる人であるように。


母親はそう心から願った。



例年よりも長く続いた夏は、ようやくここ数日で秋の気配を感じれるようになった。

前の晩に降った雨がすこしまだぐずぐずと残る朝、身支度を整えていつものように事務所へ向かった。

真面目に、という表現を用いることが滑稽に思えるこの世界で日々真面目に淡々と生きている。


雨雲の隙間から差し込む力強い朝日に思わず目を細める。

濡れたアスファルトは光を抱いて輝き、鳥が囀り始める。



缶コーヒーを片手に大きく息を吸い込む。


秋と気配と雨上がりの匂い
流れる雲から顔を出す太陽に青空が輝く。


ハッピーバースデー

今日という特別な日に
あなたにこれからも幸せのかけらが降り注ぐことを願って。

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