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私もだよ 前編

昨日まではありふれた会話がこれほどまでに幸せだと思ってもなかった。
いつもの道をいつも通り歩きいつものふたりで別れる所までダラダラ話しながら帰る。
そんな生活がこんなにも素晴らしいとは思ってもいなかった。
「美羽は志望校きまった?」
「決まったけどそう言う〇〇は?」
「見学とか言ったりするけどなかなかね」
「なにそれ?笑」
こんな会話が当然終わるとは思っても思いたくもなかった。
「あっ、そうだ美羽?」
「なに?」 
「土曜日暇?」
「暇だけどどうしたの?」
「遊ぼうよ」
「いいね、土曜日に駅前集合でいい?」
「いいよ、あっ、俺こっちだからまた明日」
「うん、また明日」

次の日の朝、いつもは〇〇が迎えに来るはずなのに初めて〇〇が家に来なかった。私もお母さんに言われるまで気づかなかった。
「美羽〜遅刻するわよ」
「もうそんな時間?!〇〇起こしに来てよ」
私は直ぐに身支度を整え家を出て〇〇の家に向かった。
私と〇〇の家は徒歩3分圏内だから走って向かい呼びベルを鳴らして〇〇を呼んだ。
「すみません、村山美羽です。〇〇起きてます?」
しかし反応がない。もう1回鳴らすが反応はない。
仕方なく私は学校に向かった。

遅刻ギリギリだったが何とか間に合い自分の席に着いた。学校にも〇〇の姿は無い。
私は戸惑っていたが担任の先生が入ってきて朝のホームルームを始めたがいつもとは様子が違う。なんというか重い感じだ。最初クラスの男子達は最初何かしたのかと茶化した感じだったが先生が深呼吸をして落ち着いてから言った。
「え〜皆落ち着いて聞いてくれ、ウチのクラスの石川〇〇くんだが…昨日バスに轢かれたとの事だ」
「え?…」
それまで茶化していた男子たちもさすがに静かになり皆近くの席の人と何か話していた。
私が唖然としていると隣の席の愛季が話しかけた。
「美羽って〇〇くんと通学路ほぼ一緒だよね?」
「うん…」
「何か音とか聞いてない?」
「何も聞いてない…」
「静かにしろ!」
クラス全員が話を先生の声に驚き先生の方を向いた。
「〇〇だが今昏睡状態だ。とりあえず変な憶測は立てないように、あとお見舞いに行きたい人は私に声をかけてください。じゃぁ今日の日程を…」
先生は何事も無かったかのようにホームルームを進めたが皆そんな気持ちにはなれなかった。
朝のホームルームが終わると私はすぐに先生の元に行き入院している病院を聞き出した。

学校が終わり家に帰ろうとしたが誰とも話し相手が居ない。愛季は別方向だし帰り道誰とも話さずに帰るのはなんだか不思議な気分だ。
いつもはすぐに家につきめんどくさい課題を終わらせ寝る。そんな毎日なのに今日だけは足取りが思い。
結局家に帰ったのはいつもの時間なのに帰ってきたのは夜のようだった。
帰ってきた私はすぐにベットに仰向けになり無意識に小声で言った。
「〇〇生きててね」

続く

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