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「94歳セツの新聞ちぎり絵」展

こんな場所にこんなギャラリーが

 巡回展が隣の市にまわってきたので、「いまだ!」とセツさんの新聞ちぎり絵展に行ってきた。
 まずは会場に驚き。「こんなところにこんなギャラリーあったっけ?」というような、駅からほど近いのに落ち着ける雰囲気。WAnestという、「住みながら仕事をしたり、趣味を活かした生活をしたい方のための賃貸長屋住居」という、集合住宅と集合店舗が一体になったスペース。ギャラリー「あかねya」だけではなく、カフェやペルシャ絨毯、北海道のソフトが食べられる店もあって、その上に住居があるというなんとも不思議な空間なのだ。

作品が「こんにちは」と語りかけてくる

 さて、セツさんの作品展だ。やはり実物はすごい。ただ、いつも展覧会に行くと、遠くから見ても「圧倒される」と思うことが多い。セツさんの作品にはそういう印象はなく、「親しげに語りかけてくる」感じ。「こんにちは」と近くに寄って見たくなる。すると「ええっ……これほんとうに新聞だ。すごい」とため息が出るのだ。

「キャラメル」があの「ミルクキャラメル」にしか見えない

 新作「ちらし寿司」は色を豊富に使ってほんとうにおいしそう。そして、技術が高いとすぐわかるのは「キャラメル」だ。箱型のものを描くのは、わたしのようにデッサンをきちんと勉強したことがない者にとってなかなか難しいのだが、セツさんも「形」に苦労したという。そんな苦労は作品からはまったくうかがえない。完全な「ミルクキャラメル」だ。
 作家が昔から絵やデザインをしてきた人だというなら、「90歳超えてもまだできるんだ」と思っただろうが、ちぎり絵は90歳になってから始めたし、その前にもとくに絵を描いたりしていたわけでもないという。才能というのは何歳になっても開花するのだと改めて思った。

94歳の素人がここまで……ではない

 いちばん好きなのは「レモネード」。「新聞に黄色は少ない」というがたしかにそうだ。緑色のストローも、下の敷いてあるコースターも涼しげ。これからの季節を乗り切るのによさそうというわけで、ポストカードを購入した。新聞だから文字が書いてあるパーツがあり、それがレモンの皮の感じを出している。またストローにも文字が入っている。不思議なことに「ほんとのストローにはこんな文字は入ってないよね」という違和感がなく、文字が入っていることに懐かしさすら覚える。
素人の作品だから温かみがあるよね、というのとは全然違う。この作家はもう「プロ」だ。90歳から始めてもプロになれるのだ。

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