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本のレビュー

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読書の感想や読後感、得られた知見を述べた投稿をまとめています。
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記事一覧

高倉やえ『雪の朝』~感想

 通訳者の作者と同じ職業に就いている「はるか」を描いた小説。  冒頭に、主人公の年令につ…

稲泉連『「本をつくる」という仕事』~感想

 本に関連した八種類の職業人へのインタビューから構成された、全七章の本。第一章は活字、第…

柚木沙弥郎・熱田千鶴『柚木沙弥郎のことば』

 図書館でもらった選書リストから、まずはこれを選んで借りてきた。選書してくれた館員からの…

山田優『ChatGPT翻訳術 新AI時代の超英語スキルブック』~感想

 本書については、以前「AI翻訳講座に惹かれているならば」という投稿をした。以下がそれであ…

本は誰がつくるのか?~安藤祐介『本のエンドロール』レビュー

 自分の本が生まれ出る瞬間に立ち会うため、人気作家が製本所に見学にくる。次々と産声を上げ…

頑張るとはなんだろう~宮口幸治『どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行…

 ベストセラーになった『ケーキの切れない非行少年たち』の続編である。このタイトルが気にな…

マーサ・スタウト著、木村博江『良心をもたない人たち』感想

 原著タイトルはThe sociopath next doorという。直訳すると『隣のソシオパス(サイコパス)』となる。これが『良心をもたない人』という邦題になった。つまり本書は、ソシオパス(サイコパス)についての本なのだ。本書ではsociopathを「サイコパス」と訳しているので、自分もそれに従って感想も書いていこう。  どうしてこの本を読もうと思ったかというと、まさに「良心をもたない人たち」に自分は苦しめられていたのではないかと疑ったから。今後どうやっていくか、この種の人

ファクトチェック~福岡伸一『ルリボシカミキリの青 福岡ハカセができるまで』感想

 福岡伸一(自称「福岡ハカセ」)の『ルリボシカミキリの青』を数年ぶりに読んでいたら、こん…

永江朗『インタビュー術!』から得た知見

校正・校閲者へのインタビュー集が読みたい  校正者・校閲者にインタビューをして、その原稿…

飯野謙次・宇都出雅巳『ミスしない大百科』~感想

「注意」のムダ使いをなくすのが第一歩  特定非営利活動法人「失敗学会」の副会長である飯野…

飯野謙次『ミスしても評価が高い人は、何をしているのか?』~感想

失敗学とは  著者は「失敗学」の副会長である。「失敗学」とは何か、その定義から引用しよう…

石黒圭『知っているようで知らない 日本語てにをはルール』から得た知見

読みやすくて信頼のおける「日本語ライティング書」はここから  世の中に文章術の本はあふれ…

中村明『文章作法事典』から得た知見

「文章術」の本は数あれど  世の中に「文章術」の本はあふれている。わたしも何冊か持ってい…

ブレイディみかこ『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』から得た知見

「底辺」託児所が「緊縮」託児所に  2010年、ブロークン・ブリテンと呼ばれたイギリスで、著者はヴォランティア保育士をしていた。働いていたのは貧しくてカオスな「底辺託児所」で、子どもたちの親の多くは労働者階級ですらない。一生、生活保護をもらって暮らす「アンダークラス」民である。ドラッグやアルコール漬けだったり子どもを虐待していたり、ホームレスだったり刑務所に送られたりといった人たちだ。  ろくでなしの親たちはそれぞれ違う信条やバックグラウンドを持っていたが、もうちょっとみ