サウナにはまる。

2月のある日、母が突然言った。

「サウナに行ってみたい」

あんたサウナ行ったことある?サウナがいいらしいよ。サウナハットっていうのかぶるんだって! ねえ、一緒に行こうよ。
サウナ好きで知られるヒャダインさんがサウナ愛を語る姿を、どうやらテレビで観たらしい。思い立ったらすぐ行動する母と、次の日には近場の大衆浴場へ行くことになった。

わたしはそれまで、サウナが苦手だった。
呼吸していると熱く湿った空気が肺に入って、息苦しくて、なんだか溺れそうな気分になる。狭い空間に知らない人とすし詰めになるのも、なんとなく居心地が悪くて敬遠していた。母が一緒なら…と付き添う形で足を運ぶことにしたのだ。

久々に訪れた大衆浴場には、塩サウナとミストサウナがあった。どんなものかわからない塩サウナの部屋に入ってみる。部屋の中央に壺があって、そこに塩が山盛りになっていた。どうやらそれで全身をこするとつるつるピカピカになるらしい。腕や脚、おなか、背中は母とお互いに刷り込み合い、つるつるピカピカに磨き合った。うん、これはいいかも。そこからわたしと母のサウナーへの道が始まったのであった…。

サウナの基本は、サウナ→水風呂→休憩(外気浴)を3セット。
最初は水風呂に入れなかったが、通い始めてだんだんと水風呂の良さがわかってしまった。入る瞬間は冷たくてしかたないけれど、使ってしまえばベールがはって気持ちよくなる。水風呂から出るとさらに気持ちよくて、身体を拭いて外に出るともっと気持ちいい。足先からじんわぁりと、びりびり痺れるような感覚が上がってくる。丁寧に珈琲を淹れているときに感じる孤独のそれと違い、これは多幸感にあふれている。これが「ととのう」なのかはわからないけれど、サウナ→水風呂→休憩(外気浴)が気持ちいいのはよくわかった。

2月から毎週2~3回母とサウナに通っていたが、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の発令に伴う営業自粛はわれわれの憩いを奪った。4/11を最後にサウナに行けなくなった。5/14をもって、ようやく解除され、少しずつサウナも再開しているらしい。まだまだ制限の中の暮らしだが、サウナを取り戻せたことは、われわれ親子には朗報なのである。全国のサウナーの皆さん、サウナライフを楽しみましょう。