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Charmesの謎が解けた時

私はなぜか「Charmes(シャルム)」と名の付くワインが好きである。
いくつも出会って試飲してきたが、そのどれもが特別な理由なく「好きだ」と感じた。

なんでだろう、とずーっとぼんやり思っていた。
Charmes…可愛げ、愛らしさ、チャーム(お守り)…と、もやもや考え、でもすぐに「答え」を知ろうとは思わずそのままにしておいた。
全てを詳らかに知ってしまうとつまらない。

それから数年経って、とあるドメーヌに行って試飲したら、そこでもCharmesが出された。
ドメーヌのマダムに「私はなぜかCharmesというワインが好きで、このCharmesもやはり好きですね。」と、ぽろっと漏らすようにコメントした。
普段はこの話はしないのだけど、彼女の醸し出す雰囲気とテイスティングしていた時の雰囲気が混ざり合って、私にそうさせたんだと思う。
彼女は満面の笑顔で、「Charmesは木のことなんですけど、その木が好む土地に育ったブドウのワインと体質的に合うんですね。」と言った。

ハッとした。目から鱗とはまさにこのこと。
Charmeは、可愛気やお守りという意味のほかに、実は木の「シデ」という意味もあるのである。
マダムに聞いて初めて知った。

よくよく考えたら当たり前のことである。
農地であるブドウ畑に「可愛気」なんていう抽象的な名前を付けることは少なく、地形とか、石が多いとか、屠殺場があったとか、歴史上の人にちなんでいるとか、
そういう名前がほとんどなのである。
今でこそブドウ畑になっているが、Charmesと名の付くところは恐らくシデが生えていた土地を開墾したものなのだ。その土地が私の味覚と合っているということなのだ。
その時初めて、テロワール(特に土地・地質の意味で)を身近に感じた。

ワインの旅は、自分を知ることに近い。
このことで私は1歩進めたような気がした。

ただ同時にそれはゴールでは絶対無くて(そもそもゴールなんてない)、新しい疑問も生まれた。
シデが好む土地からのワインに、何故自分の体がしっくりと合うのだろう…ということ。
これも分析してしまえばわかってしまいそうだけど、止めておく。

またいろいろ飲んで、少しずつ知っていこうと思う。
きっと何かがきっかけで分かる日が来る。


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