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毎日がおんなじ日の繰り返しなのだとしたら 気持ちは変わるだろうか だって明日また今日がくるから
黙っていることでしか 伝えられないそのこと 宇宙にもし絵筆が与えられたら 夜の星空にはきっと いくつかの模様が描き出されるだろう 言葉にできず夜空を見上げる たくさんのため息を拾い上げて ゆうべ星を見ながら 泣いていた君も 嫌味なほど冷静に 本棚を整理していたことも 気持ちはいつも 緩やかに形や向きを変えて 君の唇を裏切る それがわかるから君は ますます黙る 笑顔の奥の 小さな陽だまりの横の 大きな岩に挟まれて見えないままの水たまりには ひっそりと 見たこともない模様
中学生の頃、学校帰りに金星食を見た。金星は月の陰にシュッと吸い込まれるように消えた。中学生のわたしは新月や満月の周期のことはまるで知らなかったけど、新月の夜に雪が降るとかなり積もることだけよく知っていた。 わたしはそれを見たと記憶しているのだけれど、定かではない。もしかしたらその頃大好きだった人が見たという話を聞いたのを自分の体験のように記憶しているのかもしれない。 一緒に金星食を見たはずのその女友達にわたしはすごく憧れていた。万年筆を上手に使ってイラスト入りの手紙をよく
きっとだれでも今ここで そうとしかありえない という場所に立っている 心のなかに柔らかくて白い小さな核がある その核に触れることはできないけれど 肌のように温もりがある明るい光が 脈打つように呼吸している そうとしかありえない場所に立ったそのときから 与えられている自由がある その自由はときに未来と呼ばれ あるときには過去とも呼ばれ 色を形を変えて わたしたちを優しく包んでいる わたしたちは脈打つ心臓 鼓動で繋がる命 出会いという運命に束ねられた 光の集まり 過去も
人がなにかを言っているときには 同時に何も言ってはいないということにも 気がついているほうがいい 伝えたい何かは 伝えている何かではなく 伝えられない何かなのかもしれないから 人がだんまりするのだとしても もう伝えられるようなことが 何もなくなってしまったのではないと 気がついているほうがいい ことばに行き詰まるとき もっとべつのなにかが ちゃんと届けるものがあって それは伝わった後でさえ 思い出せないこと