見出し画像

46歳夫の脳出血

わたしの夫は同い年
20歳で結婚し、24歳、26歳で2人の息子を産み
現在長男も就職し、次男は大学生
食事の用意程度にしか手がかからなくなって
夫とはあまり趣味も合わず
かなり以前からそれぞれが好きなように
仕事も遊びも楽しんで過ごしていた。

2020年12月14日
仕事中に夫の携帯から電話
確かまだ11時にもなっていなかったと思う。
出てみると夫の上司が名乗り
始業後すぐに頭痛を訴えて
夫は救急搬送されたと。

瞬時に新型コロナ感染による
体調不良を想像したのだけれど
電話口の夫の上司は
どうも脳梗塞のようなんです。

はっとした。
夫の父親も若い頃に脳疾患を患い
60代半ばで他界し
夫の1つ歳下の弟も37歳の若さで
脳疾患により他界
4つ歳上の次兄も44歳で脳出血
手術により助かりはしたものの
今も車椅子生活をしている。

いつか夫もそうなると
漠然とは思っていたものの
古い体質の業界で飲むのが仕事の側面もあり
客付き合いが上手く
プライベートでもお酒が好きで
いくつもある馴染みの店で知り合う人たちと
しつこく飲み続けることが好きな夫であったし
わたしが何を言ったところで辞めるどころか
控えることすらしないことは想像に難くないので
放っておいた。

その結果、夫も46歳で脳出血を発症した。

夫の運ばれた病院は幸い
わたしの職場から歩いても15分程度の
脳疾患では高名な病院だった。
ただ、会社にはわたししかおらず
社長が戻るまで手持ちの仕事をこなし
社長が戻ってから状況を説明し
早退させていただいた。

病院で付き添っていてくれた夫の部下が
医師と会うまでの間に
夫の今朝の状態を説明してくれた。

ちょうど前の晩から寒さが増していた。
今朝は凍えるほどに寒かった。
昔葬儀関係の仕事をしていた時
よく聞いていた。
空調が整っているはずの病院でも
寒い夜は亡くなる入院患者の方が多いと。

夫はその朝も一駅手前で下車し
歩いて会社に向かっていたところ
後ろから肩を叩かれ

落としましたよ!!!

振り返ると自分のビジネスバッグを
親切な方が持って追いかけてきてくれた。

こんなことあるか???

そう言って始業前の喫煙所で部下たち相手に
笑いながら話していたそうだ。
その後すぐに始業後のオフィスで
頭痛を訴えて倒れた。

会社の方たちが迅速に救急要請をしてくれ
運良く脳疾患に定評のある病院に
搬送されることになった。

当時夫とは不仲ではあったものの
嫌っても憎んでもおらず
人間的にはむしろ好人物ではあるし
なにより17歳から一緒に過ごしてきた
大切な人であることには違いなく
心配ではあるものの

このまま死んでしまうかもな

とは思っていた。
医師の説明でも開頭して血を出さないと
脳のかなりの部分を圧迫されていて
明日までもたないと言い渡された。

わたしの父も脳梗塞により亡くしている。
父は60代前半ではあったが
大きな癌を抱えていて
その治療法に分子標的というものを選び
血管へのダメージリスクは説明されてはいたが
その2年前におきた軽い脳梗塞も
後遺症こそほとんどなかったものの
そこへの負担に思い至らず
恐らくその副作用による再度の脳梗塞で
植物状態となり
1年と保たず亡くなっていた。

その時も開頭手術をするかしないかの
判断を委ねられたが
父に関しては手術をしないことを選択した。

自分の生命以外の選択を委ねられることは
とても苦痛を感じる。

夫については開頭手術を受けることを選択した。
医師からもその方が良いとも言われた。
ただ、右脳の出血の範囲がかなり広く
命は取り留めても
後遺症は残る、自立歩行はまずできないだろう。
顔にも麻痺がのこるかな?
そんなことを伝えられた。

説明を受けた後
側のベッドで横たわる夫に声をかけ
手を握ったりしながら
ほんの少し言葉を交わす。
〇〇さんが付き添ってくれてはったんやで
とか
会社で倒れたん覚えてる?とか
少しは会話ができたように記憶しているが
今となっては定かではない。

術中に2人の息子を呼び寄せたものの
コロナ禍を理由に
院内には2人しか入れないという。

次男は近くのドトールで課題しながら待つと言い
長男と待合で過ごした。

もう、何時間待ったかはっきり覚えていない。
多分12時か13時頃手術を始めると言ったか、
手術が終わったのが18時を過ぎていたか
19時を過ぎていたか。

術中に違うフロアにあるモニタで
希望があれば手術の様子が見られると言われ
長男と2人で見に行った

当時の写真や動画の時刻を見ると
モニタを観ていたのが16:30頃から20分程度

術後顔を見られたのは20時前
HCUへの入室は1人ずつしか許されず
最初に長男、その後わたしが入っている間に
長男には次男とスイッチしてもらい先に帰宅
わたしと入れ替わりに次男が入室し面会した。

術後の夫は目を開けたりはするものの
言葉を交わすことは出来ず
看護師さんが触れることで少し反応する程度

今後入院中は面会もできない
着替えや必要なものは看護師を通して
決まった時間に受け渡しをするように伝えられ
次男と2人で病院を後にした。

帰りに自宅近くの中華そば屋で
2020年THE Wの
決勝戦の様子をテレビで観ながら
録画予約してたな、帰って観ようとか考えながら
次男とそばをすすった。

さあ大変
わたしは我が家の家計がわからない。
食費や息子たちに関わるお金は
わたしのパートのお給料から工面していた。
その他、家のローンや水道光熱通信費、保険料等
夫が管理していて、どこの口座からとか金額も
なにもわからない。

夫の入院自体はなんとでもなる。
だけど家のローンを飛ばしてしまうと
かなりマズいことになる。

それと、夫が万が一亡くなったり
植物状態に陥った時
団体信用生命保険には入っていただろうか?

当時まだ大学休学中の長男と
その年に大学に入学したばかりの次男
生命保険の給付で学費程度はなんとかなることは
ぼんやりとわかっていたが
家はよくわからない。

ヘタをすると売ることになるかもしれない。
小さなアパートに
移り住むことも考えないといけないかも。
夫の命が助かったとしても
わたしのパートのお給料だけでは
倹しい暮らしすら危うい。

そんなことを考えながら
録画していたTHE Wを観ながら
笑って寝た。

そんな2020年の年末の長い1日。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?