FaceAppを使う男性の心理とは
ここ数日、FaceAppというアプリが流行っているのをご存知でしょうか。
一言でいうと、
自分の写真の性別を転換できるアプリ
画像を読み込むだけで、男性なら女性に、女性なら男性になった姿を見ることができます。
数か月前にも似たようなアプリが流行り、今回、このような質問をいただきました。
「女性→男性よりも、男性→女性の利用者の方が多いように感じるのですが、そこに科学的な根拠はあるのでしょうか?」
リサーチしてみた結果いくつかわかったことがあったので、今回はそれについてまとめておきます。
前提
※はじめに前提をお伝えしておくと、科学的な根拠と呼べる研究は見つかりませんでした。この現象が見られたのはまだ近年のことで、研究が追いついていないのですね。
それ以前だと、LGBTに関する研究は存在しますが今回のものとは趣旨が違うので除外しました。
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生まれ変わり願望・変身願望
1つめは生まれ変わり願望、またの名を変身願望と呼ばれるものです。これは非日常を味わうことが刺激になるというものです。
似たような例だとコスプレの心理に近いものではないか、という説です。コスプレはまさに非日常の演出。コスプレの場合では女性が女性のキャラクターに変身することが多いですが、このアプリを使えば男性でも手軽にその感覚を味わうことができ、それが快感になっているということです。
では、なぜ男性は女性への変身願望を抱くのでしょうか?
ただ非日常体験を望むのであれば、コスプレをするだけでも良いように思えます。
1つめに考えれることは手軽さです。コスプレとは違い簡単に自分の容姿を、しかもリアルではなく画面上のみで行えます。
2つめに考えられることは純粋な刺激としての快感。決して味わうことができないであろう、異性になった自分への興味といったところでしょうか。それが女性→男性パターンで見られないのは、アプリの性質上、女性→男性のパターンでさほど「思っていたよりもイケメンにならなかった」というひとも中にはいたようです。
女性への憧れ・尊敬
フェミニズムとまでは言いませんが、このアプリを使う男性ほど、女性が持っている特徴に対して尊敬していたり、憧れの感情を持っている、ということが考えられます。
ここでいう女性が持っている特徴とは、
・共感スキル
・美しさ、かわいさ
です。それぞれ見ていきましょう。
共感スキル
近年、共感性(empathy)やEQ(Emotional Quotient)が重要視されてきていますが、そもEQとはこのように定義されています。
・自分自身を動機づけ、挫折してもしぶとくがんばれる能力
・衝動をコントロールし、快楽を我慢できる能力
・自分の気分をうまく整え、感情の乱れに思考力を阻害されない能力
・他人に共感でき、希望を維持できる能力
共感性は一般的に男性よりも女性の方が高いと言われています(1)。このことから、男性は女性がもつこの共感的なスキルを求めるようになったのではないか、ということです。
なぜかというと、昔は男性は強いことが望ましいと言われてきましたが、近年ではその価値観も変化しつつあります。モテる男性の特徴も「優しい」が一位であったり、また男性は「女性はわかってほしい、共感して欲しいいきものだ」ということを理解し始めています。
つまり男性の生存戦略として、女性が持つ共感スキルは必要なものになってきたのではないか、ということです。
美しさ・かわいさ
美しさ、美の概念は女性固有のものではなく、芸術に対しても使われますし、その人の風格を表現する言葉としても使われます。また、かわいいという言葉も、女の子だけではなく、小さいもの、男の子、ぽっちゃり体系の人や、おじいちゃん、おばあちゃん、ないしは物体にまで使われ、「かわいい」はもはや多義にわたります(2)。
しかしながら女性に代表される「かわいい」は男性が異性から好感を得る1つの手段になりえます。ゆえに、先ほどと同じく、かわいいと思われることこそ、生存に有利だという戦略を立てているということです。生存戦略が強さの象徴だけではなくなってきたということでしょう。
あざとい系男子も出現していますが、かわいい=人気、モテる
と考えるのは男性であっても同じではないでしょうか。
性への偏見がない
また、性に対して平等な考えを持っているからこそ、このようなアプリを使うのではないか、ということも考えられます。
もし女性差別、女性軽視思考が強ければ、たとえアプリだったとしても逆を試してみたいとは思わないではないでしょうか。
結論
リサーチはしましたが、実証研究があるわけではなく、考察部分も多いのでどこまでエビデンスが正確かは判断しかねます。
まとめると、このアプリを用いている多くの男性陣の心理傾向として、心理学の立場から考えられることとしては
・異性を体験したい欲求
・女性がもつ特徴をスキルとして得たいと思っている
このようなところでしょうか。
他に考えられることがあるとすれば、承認欲求が高いとも考えられるでしょう。暇さえあればTwitterを使用する人ほど承認欲求が高いことがわかっていますが、Twitterにこういった男性の投稿が多いというのも、そのような背景があるからかもしれません。(少し性格悪いナルシシズム傾向が高い男性であれば、
「もし自分が女性だったら、この投稿を見ている女性よりもかわいい自信がある」
という風に考えているかもしれません(笑)参考までに。
参考文献
吹野 蛍 (2018). 「ジェンダーレス男子」現象の社会学的分析, 京都大学
原島 博 (2019). 顔を変えるということ, 学術の動向, (24) , 12, 27-12_31.
加納 寛子 (2019). 承認欲求とソーシャルメディア使用傾向の関連性, 情報教育, (1), 18-23.
三浦 欽也 (2012). 女子大学生における「かわいい」感覚の構造について, 神戸女学院大学論集, (59), 2, 63-73.
登張 真稲・名尾 典子・首藤 敏元・大山 智子・木村 あや (2016). 面的協調性尺度の作成と大学生の協調性 , 人間科学研究, (37) , 151 - 164.
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