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謝らないで済ます罪相殺システムの恐怖

前回、「無意識の汚染を謝罪で予防する」ということを述べた。

本当に悪いと思ったことだけを、真剣に謝る。実はこれはとても難しい。まず「本当に悪い」と無意識レベルでは思っていても、意識レベルではそれが見えなくなってしまいがちなのだ。その大きな一因となるのがこれから説明する罪相殺システムである。

相手の方が悪い時

罪相殺システムとは、自他の罪を相殺することによって、自分を無罪にする思考形式のことだ。少し詳しく説明していこう。

まず対立する二者がいる。それぞれに非がある度合いを「罪ポイント」と表現しよう。

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仮に自分の罪ポイント4点、相手の罪ポイント6点だとする。

そこで、お互いの罪ポイントの差に注目する。「相手の方が2点ほど罪が多い」「私より相手の方が悪い!」と考えるわけだ。

次に、互いの罪ポイントを相殺し、自分の罪ポイントを0点、相手の罪ポイントは2点とカウントする。こうなれば、自分の罪ポイントは0点、自分には非がないと考えることができる。謝罪もせずにすむ。

自分の方が悪い時

罪相殺システムを採用する人たちは「なんとしても謝りたくない!」と思っている。だから、自分の方が悪い場合でも以下のように考える。

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実際には自分の罪ポイントが6点、相手の罪ポイントが4点で、自分の方が相手と比べて悪かったとしよう。その状態のまま罪相殺をしても自分の方がより2点悪く、謝らなければならない。

そこで、人は事実誤認を起こす。たとえば「自分の罪ポイントは4点、相手の罪ポイントは6点で自分よりも相手の方が悪い」という風に現実をゆがめて認識するわけだ。

この後、罪相殺システムを発動させれば、自分は0点、相手が2点となる。つまり、「自分には非がない」と考えることができるのだ。

事実誤認は気づかぬうちに簡単に起きる

人は、自分の心を守るために、事実をゆがんだ形で認識する。これは本当に簡単に起こる。それも無意識的に発生し、たいていは、本人には自覚できないままだ。

こうして、謝りたくないという気持ちが根底にあって、罪相殺システムを採用している限り、いつでも事実誤認を無自覚に発動させてしまう。その結果、いつでも「自分よりも相手の方が悪い」ことになり、全てのことについて謝らなくてもよくなる。

死ぬまで一度も謝る必要がなくなる究極のシステム。これが罪相殺システムなのである。

罪相殺システムを放棄する

では、この事実誤認を防ぐにはどうしたらよいのだろうか?

それは罪相殺システム自体を放棄することである。

たとえ自分よりも相手の方が罪ポイントが高かったとしても、
自分の側の非についてはまず最初に自分から全て謝る。

そうすれば、自分の方が悪かろうが、相手の方が悪かろうが、どうせ自分に非があれば謝ることになる。どちらにせよ謝るのであれば、わざわざ事実誤認を起こす必要もなくなる。つまり、自分に嘘をつかなくなるのだ。無意識は汚染されずクリアなまま保たれる。

相手側の非について相手から謝罪があるかどうかは問題にしなくてよい。

もちろん、問題にしなくてよいなどと言われても、どうしても気になってしまう……それもわかる。

わかるのだが、ここで一つ考えてみてほしい。

相手の謝罪の有無は相手の側の問題である。

相手からの謝罪なんて、仮にあったとしても何の腹の足しにもならない。謝罪するなら金をくれ。それに、きちんと謝罪をしない相手は、それによって無意識が汚染されていくだろう。相手の人生はどんどんと辛く厳しいものになっていく。それは自業自得だ。

でも、自分の謝罪の有無はどうか?

これは相手の謝罪の有無よりも圧倒的に重要な問題だ。自分自身の無意識の汚染に関わる。もし自分の非について相手に謝っておかなければ、自分の無意識が汚染してしまう。自分の毎日のクォリティが下がる。それだけは何としても避けたい。どうでもいい相手のために大切な自分の無意識を汚染するなどもってのほかである。

だから、このように決意をするのだ。

たとえ自分よりも相手の方が罪ポイントが高かったとしても、
自分の側の非についてはまず最初に自分から全て謝る。
相手からの反応(謝罪の有無)については、
相手の問題であるから気にせず放っておく。

もしこちらが謝罪をしたからと言って、相手がそれを受け入れるかどうかは相手次第である。結果がどうなるかはわからない。

だが、そんなことはどうでもいい。謝罪というのは自分自身のために行うのだ。謝罪をすること自体に重大な価値がある。謝罪をすれば、その結果によらず、自分の無意識の汚染は防がれ、クリアに保たれる。

だから、相手がこちらの謝罪を受け入れるかどうかは気にせず、自分の心を見つめ、自分に非があると思うことはきちんと口に出して謝罪するのである。

罪相殺システム、ダメ、ゼッタイ!

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