遠距離恋愛

会ってすぐ話し合いをした。
話し合いをしたかったのだが、向こうにはそうではない選択肢で気持ちが固まっていた。自分でもよく分からなくなっている、と伝えられた。たった少しの出来事でもこういったことに繋がる恋愛は、やっぱり難しいなと思った。

私は彼の気持ちを優先することが最後の愛情表現なのだと思ったので、感謝の気持ちを伝え、話し合いを終えた。話し合いは2時間半に渡っていた。お腹がすいてお腹の音が鳴り出した。

「ご飯、食べいこっか」

それから2人で最後のデートをした。

マンションを出て手を繋いだ。神様の悪戯なのか、今日に限って話す言葉が重なる回数が多かった。少し寂しくなった。少し歩いて、適当に見つけた居酒屋で食べたいものを食べたいだけ頼んだ。数時間前まで話し合いをしていたカップルには見えなかったと思うくらい2人の空気は和んでいた。楽しかった。

食べ終わったあとはコンビニでモンスターを買って、プリクラを撮ってボーリングに行った。プリクラは何故かお互い気にせずハートを作ったり同じポーズをしたりした。ピンを倒す度、ハイタッチした。このまま時間が止まればいいのに、と思った。

カラオケにも行った。1時間みっちり歌った。2人でよく車の中で歌う曲を沢山入れた。私たちの恋愛を歌っているような曲があるのだけれど、2人で歌っていたら隣に居る彼の目から流れる涙が見えた。泣いていた。私も気づいたら涙で歌詞が見えなかった。目が熱かった。笑って終わらなきゃ、歌いきらなきゃ、という私の中での決めたことだった為、彼に背を向け頑張って歌った。
最後は初めてドライブした時に私がおすすめした曲を一緒に歌った。笑って一緒に楽しく歌えるこの瞬間が一生続けばいいのに、と思った。

今日をできるだけ長く感じていたいと思った。
今日を終わらせたくなかった。
私は「最後」の言葉を利用した。

「最後だし」

コンビニでアイスを買って、家の近くの河原にあるベンチで食べた。その日は一段と星が綺麗だった。

「自分勝手だけどやっぱり時間が欲しい」
「もう一度2人のこと、考えたい」
そう言われた。
正直嬉しかった。やり直そう、と先走った言葉を言いそうにもなった。我慢した。

家に帰って、それぞれお風呂へ入り寝た。
あさが来た。もし今日が最後の日になるなら、もう彼の寝顔を見ることが出来るのも最後なんだと思うと、また寂しくなった。

その日は2年前にデートで買っていた写ルンですを現像しに行った。そこにはたくさんの笑顔が詰まっていた。

このまま時間が止まればいいのに、

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