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性悪な私②

ロッカーのカギを忘れたまるちゃんが、貞子さながらの様相で髪の毛を振り乱しながら、スペアキーを事務所に取りに行ったことを前回書いた。

貞子さながらの様相と書いたが、ここで誤解を与えたくないので再度書くが、まるちゃんは貞子のようにスリムではない。

彼女ははっきり言って、太い。

それも健康的に太いのじゃなくて、自分の欲望に忠実に行動した結果、全身に砂糖と脂がつまってそうな太さだ。
だがそれを打ち消すように「若い頃は細かったのよ」と彼女は言う。
彼女の娘に会ったことがあるという同僚が、「まるちゃん親子、体型そっくりよ。」と言っていた。

ここで娘がスリムなのであれば、彼女の若い頃は細かったという話も、そうかそうかと思えただろうが、それはにわかに信じがたい。

話が逸れた。
彼女のことが嫌い過ぎて悪口がつらつら出てくる(笑)







私がロッカールームで着替えていると、はぁはぁと息を切らせながらまるちゃんが入ってきた。
この部屋にあるロッカーのスペアキー全部あるんじゃね?って位の量の鍵をジャラジャラしながら持ってきた。
この部屋のロッカーは50ぐらいのはずだか、それ以上の数がありそうな勢いなのだ。

重そう。
あんたは、刑務所の看守か?


参考画像、こんなかわいいもんじゃなくて、おびただしい数の鍵が連なっている。




そしてまるちゃんは、その鍵のラベルを見て自分のロッカーの番号がないか探している。
なんでそんな効率悪そうなことやってんだろうと思ったら、彼女が言った。

「私(はぁはぁ)、ロッカーの番号を見ずに(はぁはぁ)事務所に行って。名前で(はぁはぁ)管理されているんじゃなくて(はぁはぁ)ロッカーの番号で管理されていたから(はぁはぁ)、そこにあるスペアキーを(はぁはぁ)全部借りてきたんよ。(はぁはぁ)」
と息が切れて喋りにくそう。
目を見開き必死の形相で探している。(怖い、けどおかしい)


汗だくでたくさんの鍵と格闘し、探しているまるちゃんを見て私は、

ふふふ。おもろ。
自分のロッカー番号見ていかなかったんだ。いつもながらあわてんぼうだな。

と、冷ややかに思いながら着替えていた。

しばらくして……






ない!
なんで!!!なんでなん!
私のロッカーの番号、なんでないんよ!!!



まるちゃんが大声を出した。

始まったよ・・・。
すぐ大騒ぎする醜い妖怪ばばあに変身するまるちゃん。
全部持ってきたと思しき鍵の中に、自分のスペアキーが無いことに怒り心頭である。


ちょ!もう一回事務所行ってくる!
これ違うわって言わなあかん!!!(怒)





そう言ってまるちゃんは、バタバタとロッカールームから出ていった。







うわ~。
自分が鍵を忘れてきたのを棚に上げてあの言い方はなんだ?と思う。
その一部始終を見ていた同僚と目が合って、暗黙の了解の上

『なんなんだあれ、ね~?』

と、目で合図しながら、制服に着替えた。
他の部署の人も着替えているから、大っぴらにまるちゃんの悪口は大っぴらに言えないし。






私が制服に着替え終わった頃、バッタバッタと足音を響かせながらまるちゃんが戻ってきて、やっとスペアキーを手にしたようだ。


そのスペアキーを使ってロッカーの扉を開けた。
無事開いてよかった。

「よかったね~。あって。」
と私が声をかけると、

「よかったけどさ!なんで私の鍵ないんだろ?どこやったんだろう?
家にもないし。昨日ロッカーの鍵をせずに制服のポケットにいれたまま帰ったんだと思ったんだけどね、制服のポケットにも入ってない!!!」

内心、あんたの鍵なんて知らんがなと思いつつ

「そのうち思いもかけないところから、でてくるんちゃう?」
と適当に言い放ってその場を去った。

どこかにあるよと口では言いながら、私の内心は真逆なのである。

どこかの道端にでも落として、無くなってしまえばおもろいのになぁ。

この、性悪っぷりである。











この一連の流れを思い出しながら、私は面白くて仕方がなかった。

貞子の様相で走るまるちゃんの姿。
スペアキーを取りに行ったのに膨大な数の鍵の中には、自分のスペアキーは存在せず。
もう一度、汗だくでスペアキーを取りに行く羽目になる。

ロッカールームは地下にある。
そして事務所は3階にある。
エレベーターを使うとはいえ、2往復したんだな、ウケる。





さて、ここで、冷静に考えてみたい。
私も他の同僚も、ロッカーのカギを忘れることは多々ある。
にんげんだもの。

もし忘れたらどうするか。

ロッカールームには内線電話がある。

これを使って事務所に連絡をして、ロッカーの番号を伝え持って来てもらうか、もしくは自分で取りに行く。
これが主流。

私も以前忘れた時は、内線電話で連絡して持って来てもらった。
そして皆そうやってクリアしてる。






まるちゃん、なにやってんの。
頭使えよ、電話機あるんやで。


でもね、誰も「電話してみたら」という助言はしなかったんだよね。
そういうところもウケる。
誰もが彼女にアドバイスをせずに、ただに傍観していた状態だ。

まるちゃんの怒りと焦りに満ちた威圧感に圧されて、何も言えないってのもあるけどねw






自分の性悪さを改めて実感した今回の出来事。

そしてまるちゃんのことは、やっぱり、嫌いだ。
心理学勉強しても、嫌いな人は相も変わらず嫌いだし、嫌いな奴にふりかかる災難は面白いと思える悪魔っぷりだ。
私が心理学を勉強しているのは、全人類に対して思慮深い人間になりたいとか、て優しい人間になりたいとか、思ってやっている訳じゃないから、仕方ないか。


誰にでもあるよね?他人の不幸は蜜の味的な、こんな気持ち。



あ、ない?
さーせん。