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トラウマ

【連続更新1000日達成までに熟成下書を全部昇華させるチャレンジ】
今回は、2022年12月の熟成下書きを仕上げて、更新記事としています。
当時は子供の頃の記憶が蘇って、トラウマについて考えていたようです。


______ここから______

4,5歳の頃。
母がいつものごとくヒステリーを起こして、(何に怒っているのかは私は理解できない)キーキー言いながら荷物をまとめ、弟を連れて二人で家を出て行ってしまった。
夕方だった。
だんだん暗くなっていく家の中で、じっと座って呆然としていた記憶が蘇る。
2022年12月14日感情をみつめる

私のせいで母は出て行ってしまった。
弟まで出て行ってしまった。

私のせいだ。
私が悪いんだ。
理由はわからないけど、私が悪い子で出来が悪いからいけないんだと思った。


ずっと自分を責めて、暗い部屋で呆然としていただけだった。

母を追いかけていくこともせず、泣くこともせず、
ただ、母と弟が出て行ったあとのがらんとした部屋の中に佇んでいただけだった。


不思議と涙は出なかった。

母を追いかけて縋ることも、できなかった。
いや、できなかったのではなく、母が怖くてこれ以上怒られたくなかったし、足がすくんで動けなかったんだ。



どれくらいの時間が経ったかわからないが、
辺りは真っ暗だ。
やがて玄関が開く音がし、父が仕事から帰ってきた気配がした。

「どした、暗いままで。おかあさんはどこに行ったん?」
父は明かりをつけるために、電気のコードを引っ張りながら私に聞く。
しかし、私は正直に答えることはできなかった。

私のせいで家を出て行ったなんて言えない。

しらないと言う意味で、声を発せず首を横に振るだけの私に、父は

「買い物かな?そのうち帰ってくるだろ」と独り言ちた。



父の言った通り、しばらくして母と弟は大きな買い物袋を提げて帰ってきた。
その後いつもと変わらない、日常の風景に戻った。



母が戻ってきて心底ほっとした。

母は何事も無かったかのように、私に接した。
あれだけ激高したのに、あれだけわめきちらしてたのに。
全てを忘れてしまったのかと思うくらいに、父親の手前もあるのか、なんてことない涼しい顔をしていた。

怒ったことに対して触れてこない母に若干の怯えもありながらも、私は安心した。
母がいなくなってしまうという恐怖は去った。
目の前に母はいる。
恐ろしい母だけど、やっぱり居て欲しかったのだ。

母は帰ってきた。
よかった。



しかし、この一件から、母を怒らせるとこの一連のシーンを回想してしまうようになる。
いつもいつも、母に対して怯えた。
母が消えてしまう夢や、母が死んでしまう夢を見るようになる。
トラウマになっていたように思う。
その後、母だではなく周りの人の「怒り」のようなものに敏感に察してしまい、そして自分に非がないのにも関わらず、謝ったり、その場の空気をなんとか平穏なものにしようとしてみたり、する。
今でもそうであり、この時に私の中に形成されたものがある。




心身も成長し、高校の頃になればトラウマが蘇ったりすることも、あまりなく過ごせていた。

ある日、母と話をしていたときに、この家出騒動が思い出話としてでてきた。

母が言った。
「あんたって小さい頃、言うことを全く聞いてないし。あほみたいにぼーっとしているし、あまりにも親のいいつけをきかないからさ。
あれだけ怒っても泣くでもなく、縋るでもなく、謝るでもなく、黙ってるから、かわいくないわねと思って家出をするふりをしたのよ。
懲りるかな?と思って。
家を出ようと、玄関の扉を開けたら、きっとこの子は泣いて縋ってくると思ったけどね。
一切出てこなかったしね。
ホント、かわいくない子!と思いながら買い物に行ったのよ。あははは。」

笑って話す母に対して、私も表面上笑うしかなかった。
しかし私は、母からあの日の家出の理由を聞いて、もう一度傷付いた。


______ここまで______


母娘のこの温度差。
私はトラウマになる(今でもたまに思い出す)ほどの、一件だったのに。
母にとっては子を懲らしめたかっただけか。
「懲りるかな」と思ってした母の行動は、懲りる、を通り過ぎてトラウマになった。
効果てきめんじゃねーか。

母には言うつもりもないし、言わないけど。
これは自分で克服しなきゃいけないんだ。
母に言ったところで、今更何言ってんだってなるだろう。



子育てって難しいね。
あの時激高した母の気持ちはわからなくはない。


わからなくはないけど、叱った後のフォローはしてほしかったな、と思うけどね。
まぁ、時代も今ほどの子育て論はなかったから仕方ないことなんだろう。

だから今、私が、私をフォローしている。
よく我慢したねと、こうやってnoteを書いて、小さいわたしを慰める。