深夜4時の憂鬱
今夜もどっかの大企業の知らないお偉いおじさんのお誕生日をお祝いして、
ほろ酔いとも呼べない微酔いで西麻布のラーメン屋の赤い暖簾をくぐる深夜4時。
3年前なら普通盛りのチャーシュー麺を迷わず選んでいたのに、今はミニラーメンしか食べられなくなった。
隣のテーブルに座った同じ歳か、二、三歳上の男性二人組の会話が耳に入ってきた。
一人の男性が恋人の惚気話をして、もう一人が相槌を打っている。
「居酒屋でも楽しそうにしてくれて、財布を出そうとしてくれる。」
「旅行も普通のところで、割り勘を提案してくれる。」
「顔も可愛いのに中身までよくて最高。」
まぁそんなようなところだった。
港区のラーメン屋でそんな甲斐性のない話を聞くことは滅多にないから思わず顔を覗き込んでしまった。
が、印象に残るほどのイケメンでなければ衝撃的な程の不細工でもない。
本人達の話によると年収は500〜800万。
まぁ20代にしてはいい方なのだろう。
何を批判しようというわけではない。
居酒屋で楽しそうにして、お財布を出そうとして、安い部屋の旅行を割り勘して、いい子の判を押してくれるなら私も喜んで真似しようと思っただけだ。
そんな簡単なパフォーマンスでいいんだと、私は何を難しく考えていたんだろうとそんなことを思った。