ChatGPT: もっと深くケインズを語らせる_2305
overview
以下の記事で、ChatGPTに、ケインズ経済学の概要を語ってもらった。今度は、もっと深く、洞察をもった内容を語れるかを検討する。
Orientation
前回の「ChatGPT:ケインズ経済学を語らせる」のPracticeで分かったことは、「百科事典的な知」、つまりは、教科書やWikipediaにあるような定説を、ChatGPTに語らせるのに、その説明の構造を提示すると良いというものである。
提示した情報を、Modeling Languageで以下、表現してみる。
上記のQueryは、Compositionと呼ばれる静的構造 (Static Structure)を示した内容となる。Compositionとは、Whole - Partsの関係ともいわれる。全体とその構成要素を、明示している。
つまりは、「目次」が、構成要素の構造を示しており、「目次」を提示することで、QueryのOutcomeの構造の限定しているということになる。
Goal of Writing
ただ、ChatGPTの活用において、「百科事典」を引いて、その内容を確かめるための使うのは、あまり、メリットがない。最初から、Wikipediaを閲覧すれば、ことが足りるからである。
私の生業は、エンジニアであり、私の書く文章の目的は、工学的知的好奇心を満たすためと言える。実際、誰が読むかは知れないnote.com にこのような文章を投稿する理由、目的は何か、そして、ChatGPTを支援ツールとして使う利点は何かを、考える必要がある。
note.comに文章を投稿する理由、目的は、以下と考えた。
JTBDとそのSolving
エンジニアとして、発信する情報は、つまり、自分の目の前の課題(ジョブ)を解決するのに、有益であった「知の組み合わせ」を、説明することである。
目の前のジョブとは、「Job To Be Done」(JTBD) と言われている。ヒトは、JTBDを解決するために、行動する生き物で、もっとも最適と思われる選択をすることが、行動選択の意味とも言える。
置かれている状況によって、最適な「知の組み合わせ」は異なるし、各々の個別の選択基準も存在する。が、あるうまくいった「組み合わせ」があるなら、その内容は、参考になるであろう。
つまり、発信する情報は、あるJTBDに対する解決の「知の組み合わせ」であり、それは、Scene (Scenario)を含んだ情報であると考えられる。
で、話を、ChatGPTの活用に戻すが、ChatGPTに語らせるのは、あるSceneに対する、あるJTBDの解決方法であり、その「知の組み合わせ」であると考える。
Direction
前振りが長くなり、すいません。
以下、ChatGPTが、もっと深く、洞察をもった内容を語れるかを考えたいと思います。
上記の考察で、ChatGPTに、以下の情報を与えることで、洞察を導きだせないかを、Practiceしてみます。
目の前にあるJTBD
その状況を含めたScene (Scenario)
ChatGPTに使ってほしい「知」(今後、この「知」を、Grainと呼ぶことにします)
Query structures
ケインズ経済学のWikipediaと、現状の日本の状況を鑑みると、ある洞察を得ることができます。これは、正しいか否かは、観察されている他の事象も含め、検討するべきです。が、とりあえず、その洞察に、ChatGPTを誘導して、語らせることが可能かを、検証します。
中身の詳細は、次回の投稿で、整理します。
Q: ケインズに基づくと財政赤字は、問題とする必要はないか?
ChatGPT Answer
ケインズ経済学の視点から見ると、財政赤字の発生は問題ではありません。むしろ、財政赤字は景気後退を防ぐための有効な手段となり得ます。
ケインズは過剰貯蓄が経済の問題を引き起こす要因であると考えていました。過剰貯蓄は計画された投資額を超える貯蓄を指し、これが投資不足を引き起こし、結果として景気後退を招く可能性があると主張しました。なぜなら、投資が低下すると企業の生産活動が減少し、失業が増加することで民間消費も低下し、さらなる景気悪化を招く恐れがあるからです。
ケインズの有名な言葉「人々が月を欲するために、失業が発生する」は、この過剰貯蓄の問題を強調しています。つまり、人々が過剰に貯蓄を増やすと、企業の需要が減少し、それによって雇用が減少し、結果として経済全体が停滞してしまうのです。
ケインズの式(問題点①)を用いて考えてみましょう。GDPの式は、民間消費(C)、民間投資(I)、政府支出(G)、純輸出(NX)の合計で表されます。また、別の式では、民間消費(C)、民間貯蓄(S)、政府徴税(T)の合計となります。
ここで、(G - T)は政府支出から政府徴税を差し引いた値であり、財政赤字を表します。一方、(S - I)は民間貯蓄から民間投資を差し引いた値であり、過剰貯蓄を示します。さらに、(G - T) = (S - I) - NXという関係も成り立ちます。
この関係を考える(問題点②)と、財政赤字の発生は過剰貯蓄の問題を緩和する効果があります。財政赤字が生じると、政府支出が増え、民間投資不足を一部カバーできます。つまり、過剰貯蓄が投資不足を引き起こすリスクを軽減し、景気後退を防ぐ効果があるのです。
したがって、ケインズ経済学の視点から見ると、財政赤字の発生は問題なく、むしろ経済の安定化や景気回復の手段として活用されるべきです。財政赤字によって政府が投資を増やし、失業を減少させることができれば、経済全体の活性化が期待できるのです。
申し訳ありませんが、先ほどの回答に誤りがありました。訂正いたします。
過剰貯蓄が発生すると、民間投資が不足するというのは正しい理解です。しかし、過剰貯蓄を穴埋めするために財政赤字を引き起こすというのは、ケインズ経済学の視点では正しくありません。
過剰貯蓄が発生すると、民間貯蓄が民間投資を上回ります。この状況では、民間部門全体の需要が不足し、景気後退のリスクが高まります。
ケインズの考え方では、財政政策による有効需要の創出が重要視されます。財政政策では、政府が支出を増やすことで民間投資の不足をカバーし、景気の回復を図ることができます。この場合、財政赤字は貯蓄とは直接的には関係ありません。
財政赤字は、政府の支出が収入を上回る状態を指します。財政赤字によって政府が支出を増やすことで、民間投資の不足を補うことができます。つまり、財政赤字による支出は、過剰貯蓄されている部分を吸収し、経済全体の需要を活性化させる役割を果たすのです。
したがって、過剰貯蓄を解消し、民間投資を刺激するためには、財政赤字を引き起こすことが一つの手段となるのです。財政赤字によって、経済の活性化や景気回復を図ることができるという考え方がケインズ経済学の主要なポイントです。
Discussion
Query文で、提示した「Outcome」である「ケインズ政策に基づくと、財政赤字の発生は、問題ない」という主題を、「序文・本論・結論」の流れの中で、序文、結論にて、展開しており、論文形態として、問題ない。
Query文で、提示した「Grain」(知)は、回答の中で、引用して使われている。が、 提示したケインズの言葉、「長期的には我々は皆死んでいる」は、回答では引用されていない。
文章展開の中で、当該キーフレーズを使うシナリオを、ChatGPT側では、構築しなかったということ。
このフレーズを使うには、以下のシナリオを選択させる必要があった。
問題点①:GDPの三面等価の恒等式が、ケインズの式と記述されている。これは、Queryの指示ミスと言える。具体的に、正しく、記述することが必要と判断
問題点②:「この関係を考えると、財政赤字の発生は過剰貯蓄の問題を緩和する効果があります。」の記述が、「GDPの三面等価の式」と、「財政赤字の発生と過剰貯蓄との関係」を、説明するのに、論理の結びつきが弱く、説得力がない。
Internet上でも、「GDPの三面等価の式」と、「財政赤字の発生と過剰貯蓄との関係」を使った論述展開は、少なく、世間一般の知としては、定説では展開されていない。この部分は、本論述における「発見」であり、Insight or Opinionを形成する軸になる。この部分は、ChatGPTでは記述できないと思われる。
Conclusion
ケインズの知見をもとに、財政支出の有効性と、貯蓄過剰の問題をもとに、財政赤字について、論述させてみました。が、世間一般で語られているように、何とも、論理が通らない回答になりました。
やはり、ChatGTPに、世間一般で語られている論述以上の洞察を語らせるのは、ムリという結論でした。
与える情報を少なくする方が、部分最適な回答により、却って、示唆のある回答をしてくるかもしれないです。ただ、そのような部分最適な論述は、エンジニアの立場からは、「ウソ」であり、語らせる意味もないです。
ブレインストーミングの一環としての利用は可能かもしれないが、すべてを、ChatGPTに書いてもらうのは、難しいという判断になりそうです。
次回は、今回のChatGPTの回答の論理的落ち度について、考察したいと思います。
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