アメトーーク!のようにコンボジャズを(アドリブソロなんかやるつもりじゃなかった話)

今の自分のメインフィールド(……カーティス……メインフィールド……w)(つまんな)はジャズ、フュージョン、ファンク、ちょっとポップスだと思います。

特に演奏機会が多いのはジャズ。の中でもコンボジャズ。
今では大好きなコンボジャズですが、実は全くやるつもりがありませんでした。


○コンボジャズとの出会いからの「つまらん期」

元々5歳からエレクトーンを習い、教材で出てきたジャズの曲(ロシア民謡の「黒い瞳」のビッグバンドアレンジ)が好きになり、小学4~5年生頃からビッグバンドジャズを聴くにようになりました。Glene Miller、Count Basie、Duke Ellingtonとか。Tokyo Ensemble Labも。

高校時代も、吹奏楽部のちょっとした催しでApril In Paris、In The Mood、Strike Up The Band(New Sounds In Brassのあれ)を演奏したり。

ジャズといえばコンボではなくビッグバンドでした。


大学に入学し、授業が始まる前日にビッグバンドサークルに入部し「これでジャズをどっぷりやれる!やった!」とウキウキ(後にとんでもないことになる)(のですがその話はまた今度)。

そのすぐ後、4月中旬くらいだったかな。授業の後に同期のベーシストから話しかけられました。「コンボジャズって知ってる?俺コンボジャズ研入ってるんだけどお前も来ない?」と。

…コンボジャズって何?

小編成でやるジャズらしい。なんかビッグバンドより地味らしい。とのこと。
とりあえずジャズであることは間違いないらしいので見学に行くことにしました。
(よくよく考えれば、当時既にBIll Evansの枯葉とかArt BlakeyのMoanin'とか知ってたので、ただジャンル名を知らないだけでした。)

で部会にお邪魔してみると…めっちゃ人いる。15人くらい?かわるがわる演奏して、みんなアドリブソロ取ってる。

えっキモッ。アドリブ前提なの?
そして地味っ。どの曲も140BPMくらい。ずっとmf。みたいな。

先輩から「君サックス吹けるんでしょ?何かやってみなよ」と言われ(今思えば完全なジャズハラ)、ちょっと演奏。確か枯葉?かThere Will Never Be Another Youだった記憶。
まぁまぁ吹けた(自慢)(まあアドリブがある音楽好きだったし)。


というわけでジャズ研に入部。

したものの、入部当初はあまり面白くなかったです。全然好きになれませんでした。コンボジャズ。
ビッグバンドと比べてダイナミクス変化ないし、コードなぞってメロディー作って、何が面白いんだ?って。

(しばらくして部員めちゃ減ってサックス(自分)、トロンボーン×2、トランペット、ベースというメンバー編成になってしまい、半年くらいピアノとドラムをやらされサックス吹けなかったから。というのもある)


○面白くなったきっかけ

大学1年の冬、ビッグバンドサークルで翌年の選抜メンバーを決めるオーディションがありました。
当時、サックス以外のパートはピッタリの人数だったのですが、アルトサックスだけ3人所属していて1人落とさなきゃいけない状況。

で、自分は見事にそのオーディションに落ちました。

サークルの合奏は山野(大学ビッグバンドの甲子園みたいな大会)予選向けの曲練習ばっかりで暇だし、
大会予選向けの録音時もオレ一人だけPA室ぽつーん。でモチベーション超低迷。


みたいな時に練習施設の外で練習(Megalith / T-SQUAREの鬼ユニゾン)してたら、別キャンパスのコンボジャズ研の先輩が話しかけてくれました。

「君いいねぇ今度なんか一緒にやっちゃおうよー」とのこと。

まじすかジャニー(仮)(勝手に命名)さん。

ジャニーさんがよく聴かせてくれたのがKieth Jarretteでした。スタンダードばっかりのやつとか、Vienna Concertとか。
凄くきれいな音色。まるでガラス玉が弾んでいるみたい。
また、曲に抑揚があって、まるで物語のよう。これまで聴いてたコンボジャズ(ビバップとか)とは全く別物でした。

そして特に好きになったのがインタープレイ。

(Wikipediaで引いてみたら意外と簡素でげんなり)

ソリストや誰かがイニシアチブを取るのではなく、有機的な掛け合いで自然と曲が盛り上がります。これがすごく面白かった。

自分はビッグバンドとコンボジャズ(ざっくり説明すると「譜面通りに演奏する音楽」と「アドリブ主体の音楽」)の違いを、よく漫才とフリートークに例えます。
同じお笑いというジャンルですが、前者は台本があって、その台本をいかに面白く演じるか。後者はお題だけあって、その場の流れで話がどんどん展開し、話の方向が変わっていく感じ。
自分はKeith Jarretteと出会って、コンボジャズに対してこの後者の面白さを見出しました。


また、大学4年時、あるコンボジャズのライブを聞きに行きました。

突発的に決まったライブらしく、事前の打ち合わせもほとんどなかったようで、セットリストは誰でも知ってる系スタンダード曲ばかりでした。
その分インタープレイがすごくて(要は曲自体を演奏する労力が小さい分、どう演奏するかに力を配分できる)、奏者が終始ニコニコ、というかケラッケラ笑ってました。

当時「音楽は神聖なもので、真剣に取り組むものだ」みたいなイメージで向き合ってきた自分にとってはすごく衝撃的で、このライブの影響は大きかったです。

それ以降、自分のライブでもインタープレイはもちろん、ハプニングやセットリストに全くない遊びなんかもその場で取り入れて楽しめるようになって、
ただ、もともと音楽に対して持っている真剣さのイメージは根っこありますから、自分のステージに大きな振り幅が生まれました。


○コンボジャズと自分の好みが重なった

音楽に限らず様々なエンタメに関して、企画そのものや台本より、場当たり的に起こる掛け合いが好きみたいで。

例えば、テレビ番組で言えばアメトーーク!やダウンタウンDX、ガキ使のトーク枠とか。水曜どうでしょうとかも。
ラジオはNack5の鬼玉とかすごく好きでした。最近だとアルピーの沈金とかかな。
Youtubeは東海オンエアとか。
どれもその場で起きる人間(キャラクター)同士の相互反応で楽しんでる感じだと思います。

自分にとってのジャズのインタープレイの面白さってこのイメージなんです。

つまり、コンボジャズはアメトーーク!をやっているようなもので。

大学卒業してからリーダーコンボジャズバンド(OPTIMISM)や、フュージョンバンド(Projection Line、P.L.Fragments)を組んだり、今でも年一くらいの頻度でリーダーカルテットでライブを開催しています。

そして、ライブが終わっていつも思うのが「今回も面白かったなぁ」「よく笑ったなぁ」という超第一次的感想。
もちろん、「あの曲のあのフレーズがー」「あのコードに対してあの音選びはー」みたいなのもありますが、それ以上に思い出すのがメンバーとお客さんが爆笑している風景。


ジャズに対するイメージは幅広く、人によって全然違うと思います。
よくあるのが「渋い」「スモーキー」「ウィスキー片手に」「葉巻咥えて」みたいな。
もしくは「熱い」「汗」「泥臭い」「個性のぶつかり合い」とか。
ちょっとジャズかじった人だとアカデミックさと精神性の深さとかかな。

でも正直自分は、「会話」「談笑」「飲み会」みたいなイメージです。数人でケラケラ笑いながらワチャワチャしてる感じ。

ただ、やはりライブですから、お客さんに向けて整えてる部分がある。やっぱりアメトーーク!が一番近いかな。
「じゃぁテーマは酒バラで」は「甲子園芸人ーー!!」みたいな。
「ここのEb7どうする?リディアンセブンス?え、お前リハモすんの!?やられたー」みたいに「今年の智弁強いな。やっぱエースのスライダーキレるもんな。コンパクトにヒットしないとちょっと蛍ちゃんやってみ。いやできるかぁーい」的な。
いや、マジで実際そう。


(ちょっと真面目な話すると、そんな背景があるので、自分の楽器のコンボジャズ用セッティングは反応速度重視にしてます。思いついたことがすぐにできるように。一般的には「音色にこだわって…」とか、「丁寧にフレーズをなぞるため…」とかだと思いますが、自分にとっては「あいつ、いつBdimブッコんで来るかな…ほら来た!今だ短三度駆け上がり!!」みたいな駆け引きができるようにしてます。)


だから、コード理論とかスタンダードの解釈理解がとても大事なのは分かるけど、正直自分にとっては枝葉の一部でしかなくて、それよりもメンバーがお題をどう解釈するか、どう仕掛けてくるか、関西弁なのか一発芸系なのかとかの方がよっぽど大事で。

それに合わせて反応しあって、「こう来たらこう!」がカチッとハマった時の「だよねーーーー!!」が最高に気持ち良かったりします。

し、結構お客さんも分かってくれます。ジャズ層も、非ジャズ層も。
そりゃそうよなケンタッキー骨ごと飲み込んだら誰でもダメーーって思うもんな(よく分からない人はトム・ブラウンで検索)


○編集後記

という記事を書いてみましたが、まるで「おれ、芸人みたいに面白くジャズやってるんだぜ」って解釈ができちゃいそうな感じですね。うーん、とりあえずそんなつもりはないです。

が、身内の飲み会でケラケラ笑うの楽しいじゃないですか。で、時々「この飲み会人に見せても面白いよな」って時あるじゃないですか。それがちょっと行き過ぎてライブするようになっちゃったみたいな感じです。

もちろん面白くなるよう努力はしてますし、今のところ継続的に集客できてはいますが……うん、頑張らないとただの寒いギャグおじさんになってしまう。


そして、今になって怖くなってきました。もしジャニーさん(仮)がこの記事見たらなんて思うかな…「そんなつもりじゃなかった真面目にジャズやれ」って言われるかな…

まあでもあの人も、セッションの最中に大酒飲んで好きな女の子に電話して「俺これからソロ弾くからちょっと聞いてて!!」って楽器のすぐそばに電話置いて弾き始めて、満足したらセッション投げ出してそのままどっか行ってまた電話してたもんな。

その背中見てきたんだから当然オレもこうなるわ責められる理由なかったわ。
後輩よ、のびのびやろうぜ。ナカジマックス作ろうぜ。

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