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可愛らしい緑と全身鏡

一人暮らしを始めて早三か月弱。ついに、私の部屋に同居人がやってきた。
その名も″ソテツ”、南国感漂うフォルムが何とも愛らしい。そのくせ、葉は硬くて触ると痛い。
水やり頻度も少なく、虫もつきにくいそうで、今まで植物を育てた事が殆ど無い私でも育てられそうだ。

自宅に持ち帰り、小さな棚の上に置いた瞬間、この部屋にぴったりの緑だなと思った。
その隣に、これまた入居当初から欲しかった全身鏡を立てかけてみると、ずっとそこにあったのではないかと感じる程に部屋に馴染み、その部屋をより好きにさせた。

朝、死にそうになりながら身体を起こすと、目の先に可愛らしい緑があって、「おはよう」と思う。
日々独り言が増えつつあるが、まだ植物への挨拶を口にするまでには至っていないらしい。
部屋でくつろいでいる時も、完成した料理をテーブルに運ぶ時も、ふとした瞬間に緑に目を向け、可愛いなぁと口元が綻んでしまう。

今までコンパクトサイズの手鏡と睨めっこしながらしていた化粧も、リビングとキッチンを仕切る扉の反射を駆使して全体のバランスを見ていた洋服選びも、全身鏡一つでストレスフリー。身支度の楽しさも数割増しだ。

たった2つ、部屋に物が増えるだけでこんなにも毎日ときめく事ができてしまっていいのかしら?と思う。
あまりにも今の暮らしに充実感を覚え過ぎて、抜け出す気が無くなってしまわないかと少し心配にもなる。
まぁ、そんな事を態々心配していても仕方がないのだけれど。

兎にも角にも、今は愛くるしい部屋で日々ときめきながら、健やかに、時にはだらしなく、暮らしを謳歌しようと思う。というか、絶賛謳歌中である。
今日も家に帰ったら、可愛らしい緑に「ただいま」と思うんだろうな、きっと。

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