レイバンのスパム

つい先日、僕のインスタグラムのアカウントからレイバンのスパム広告が投稿された。何者かに乗っ取られたらしい。何年か前に流行ったやつだ。セール価格のサングラスと販売元のURLが記載された粗雑なデザインの広告画像が投稿されていた。幸いにも投稿されてから数分後に気付いたフォロワーの友人がすぐさま連絡をくれたおかげでポストをすぐ取り消すことができた。それからセキュリティを強化するための簡単な対応をいくつか施し、一旦様子を見ることにした。ところが、その1時間後と2時間後にまたレイバンの広告が投稿された。最終的にはアカウントのパスワードを変えたらスパム投稿が収まった。元々のパスワードは10文字以上で大文字小文字のアルファベットと数字をそれぞれ最低1文字以上含む予測されにくいものだった。となると、おそらく気付かぬうちにフィッシングサイトに誘導され、まんまと情報を抜かれていたのだろうか。数年前のレイバンのスパムが流行った時期ならまだしも、今になって被害に遭うのは、なんだかまるで流行時期でもないのに独りインフルエンザに罹って苦しむような気分だ。ましてや、大学〜大学院と6年間コンピュータサイエンスを専攻し、現在業務でコンピュータやWeb技術を扱うエンジニアの身としては、まさか自分が、と恥ずかしさが込み上げてくる。少し前に7payの不正利用事件が世間を賑わしていた。原因となったシステムの脆弱な仕様が明るみになった時、開発元はなぜこんな仕様にしてしまったのだろう、と理解に苦しんだ。けれど、きっと彼らも、まさか自分が、と思ったに違いない。天下のGoogleでさえもセキュリティの脆弱性から事件を起こしている。明日は我が身。今回の一件で自分も改めて気を引き締め直そうと心に誓った。

ところで、レイバンのスパムの広告主は果たして本当にレイバンなのだろうか。調べてみると、やはり違うらしい。スパム広告に記載されたURLに飛ぶとレイバンの公式webサイトに似せた偽のwebサイトで、そこで売られているサングラスも偽物の粗悪品のようだ。

高校時代、アウトローな同級生が僕にしてくれた話を思い出す。

「公道で街宣車から騒音撒き散らしてる街宣右翼ってなのは実は右翼じゃない。むしろその逆で、右翼と対立しているような組織がやっているんだ。だってほら、あんなことしてたら右翼の評判は落ちる一方でしょ。評判を落としたいヤツらがやってるんだよ。街宣車の中に乗ってるヤツらはバイトらしい。」

この話の真偽はさておき、その切り口で事物を考察してみることは――あくまで切り口の一つとして、だが――大事だと当時思った。これは行動の結果の有効性によってその行動の意味は決定されると主張するプラグマティズム(実用主義)の考え方だ。レイバンのスパムも同じ切り口で考えてみれば、スパム広告でレイバンのブランドイメージは毀損されていく一方だ、ということは広告主はレイバンではないよね、と。こんなことはよく考えるまでもなく当たり前のことなのだけれど、意識していないと知らぬ間に誤った情報や印象を刷り込まれてしまうことが往々にしてあるのが社会だ。今回の件で僕にとってのレイバンの印象を悪くしてはいけない。そのことを強く意識しなければならない。社会に振り回されずに正しく事物を捉えようとする姿勢は常に意識したいものだ。

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