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アーカイブ10-勘違い野郎-

福島県いわき市小名浜を歩きながら思いついたままに歌ってみる。
流通音源2枚目
「short REPRISE」

の発売予定日は目前に迫っていた。

この作品によって、いよいよバンド内不和とレーベルとの軋轢が表層化する事となってしまう。

些細なミスによるテイク(録音回)数の増加、終わりの見えないレコーディングに、収録予定曲数が一向に出揃わず、更には1曲分丸々録音データが飛ぶという信じがたい事故が起き、メンバー内ではレーベルに対する不信感を訴える声が、レーベルサイドからはバンドの手際の悪さに厳しく追及が、というどん詰まりの様相を呈していた。

なんとか残り一曲というところまで来てはいたが、"今日中にデータを送るように"とレーベルから指定された期限前日、我々は

2012.08.24 and 25
「ONA FES 2012」

という野外フェスに出演する為、福島県いわき市小名浜の三崎公園にやって来ていた。
以前、京都で対バンする機会のあった、To overflow evidenceといういわきのバンドが主催するこのフェス。
震災後の福島に留まり、自身たちの大切な場所、集まって遊べる場所を、まさにDIY精神で創りあげた2日間(現在でも毎年8月に開催されている)。
メンバー全員で更地になったままの町並み、陸上に横たわったままの漁船、波が染めた3階部分ぐらいまで色の変わったビル、色んな所を見て回った。

フェス出演後、会場の近くにあった浜辺で藤ぃと俺が一緒に歩きながら録った音にシンセの音色を重ねたものを音源の最後に入れようと決めた。
完全即興携帯での一発録り。
それが「for」という曲である。

移動中の車内で揺られながらJr.がシンセを打ち込んでくれ、なんとか締め切りに間に合った事を覚えている。


そして翌月、5回目となる自主企画

2012.09.22(土)
memento森
to
you
「testament」

場所:神戸 VARIT(兵庫)

代金:前売 ¥2,000-/当日 ¥2,500- (ドリンク代別)
開場/17:30  開演/18:30

出演:
-Live stage-

チーナ

環ROY

KANA-BOON

-Floor stage-

ばきりノす

写真展:
Honami(nu)

出店:
hythm record(Music shop)

cafe&bar The Second(Food)

空間演出:
吉田姉弟(照明、演出)

DJ:
青山義人(JUNXION)


図らずもこの日以来、現在に至るまで「testament」は開催されていない。


殆ど話した事の無い話をしようと思う。

例え結果は同じでも、そこに至るまでの選択や工程、はたまた因果や動機などが織り重なった反物のような美しさが人生にはあると思う。
皆いつか絶対に死ぬが、老衰、病死、事故死、中には殺されたり、自ら死を選ぶ人も居る。
長い時間をかけてようやく後悔と贖罪は終えた。
しかし、バンドにとっての大きな区切りを死と捉えた時、現在の復活に不可欠だとしても、この死因は未だに気に喰わない。


音源は無事発売できたが、前述した不和によりレーベルを抜けて自分達でやろうという話や、それにしては資金も無いしリスクが大きいという意見があったり、将来への不安感も膨らんでいた我々は、濃霧の中を彷徨っていた。
そんな折、松ケンさんがある話を持ってくる。

「知り合いのクラフト(楽器の制作やメンテナンスを行う人)さんがメジャーレーベル関係との太いパイプがある、僕がやってるバンドにも興味をもってくれてて一度ライブを観に来てもらおうと思うんやけど。」

恐らく皆、期待はしていなかったが少しでも可能性があるなら!と快諾した。

後日、松ケンさんから

「クラフトさんがいたく気に入ってくれたようで、大事な話をしたいので一度来て欲しいと言われた!」

というような旨を聞く。

後日メンバー(全員だったか数人だったか...正直この頃の記憶が凄く曖昧な為、前後関係等含め、細かな部分の正確性を欠いているかも)と話を聞きに行くことに。

気さくな元ヤンのおっちゃんという風体のその人は、自身の工房に迎え入れてくれるなり、楽し気に自分の作った機材のあれこれを話出した。
楽器や音楽に対する愛、最近のシーンの音楽に対する不満、そんな事を熱っぽく語りながら、

「そこで、君らや!ライブ見せてもらったけど、今まさにシーンに必要なのは君らみたいな音楽や!!
松ケンくんから聞いてるかもしれんけど、○○(某メジャーレーベル)のA&R(新人発掘)を担当してた事もあって、君たちを繋げたいんや。それにワシにもホンマに少しやけど実入りがあるし!ガハハハッ」

そこから具体性のある話に変わっていった。
どうやらそのレーベルの新しい部署が出来る、そこの責任者が早く結果を出そうと新人発掘に躍起になっている、その為かなりの好条件で契約が出来る(かなりリアルな金額の提示)、既にその人には音源とライブ映像は見せている、等々。

そして、最後に

「先方は一度実際にライブ見たがってるけど、音源とライブ映像の時点でかなり気に入ってる。ワシの紹介という部分もあるしほぼ決まると思っていてくれ。あと、もし決まった時に今のレーベルに居られると権利関係や、引き抜きとなった際にお金の関係がややこしくなるので、悪いけれど先にレーベルは抜けておいてくれ。またすぐに連絡する。」

と言われその日は終了。

いよいよ自分達の未来に光が見えた。くすぶり続けるのももう終わり。
応募したFUJI ROCKのルーキーステージに自分達ではなく後輩のバンド名が載っていると毎年落ち込んだり、ラジオやテレビから流れる知人の音楽を聴きながら後ろめたい気持ちで豚丼を食うのも、満員のバスで見た事のあるバンド名が入ったグッズを身に着けている人が前にいると極力呼吸を浅くしてしまう事も、日々老いていく親についには何も将来の話をされなくなってしまった後ろめたさも、あれもこれも、全部全部終わり。

皆に安堵の色が見えた。
それぞれの経済状況や、バンド内の空気も、本当にギリギリのところで全員踏ん張っていた。

流石に申し訳なさはあったが、満場一致でレーベルを抜けようという話になった。
"くれぐれもレーベル間での揉め事にならないように"とくぎを刺されていたので、最初は"これ以上迷惑をかけないようにレーベルを抜けようと思っています"という趣旨で話していたが、レーベルサイドは当然"そう思っているならこれから一層頑張っていこう"という形で平行線を辿り、最後には半ば喧嘩に近い状態で無理矢理抜けるという形になってしまった。

"そもそも今回出した「short REPRISE」はアルバムを出す前提でリリースしようとなっていた、そこまで含めて制作費や宣伝費の回収を見込んでいたので、どうしても抜けるならせめて今作のレコーディング代だけでも払ってくれ。"

レーベルサイドからの最終回答にメンバー内で反発もあったが、向こうの言い分にハッキリとした正当性がある上に、やはりお世話になった部分も多かった心苦しさから早くこの話を終わらせてしまいたいとなり、その条件を呑むことに。

それに今来ている条件ならすぐに返せる。

結局、先方の言いつけ通りレーベルサイドには本当の事を言えないまま我々はフリーの状態に戻った。


そんな中、また松ケンさんのところに連絡が入る。

「なんかまた大事な話あるみたいで一部のメンバーで来て欲しいみたいなんやけど...」


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memento森3ヵ月連続企画開催!!

▼5/24(金) @南堀江SOCORE FACTORY
memento森 pre.『NEVER 宴DING BEAT vol.7』

出演/
memento森
ANYO
PJJ
soha

OPEN 18:30 / START 19:00
ADV ¥2500 / DOOR ¥3000 (+1D)


▼6/20(木) @新代田FEVER
memento森 pre.『NEVER 宴DING BEAT vol.8』

出演/
memento森
Yellow Studs
INNOSENT in FORMAL

OPEN 18:30 / START 19:00
ADV ¥2500 / DOOR ¥3000 (+1D)


▼7/19(金) @神戸VARIT
memento森 pre.『NEVER 宴DING BEAT vol.9』

出演/
memento森
空きっ腹に酒

OPEN 19:00 / START 19:30
ADV ¥3000 / DOOR ¥3500 (+1D)
学割 ¥2000 (+1D)

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