楽園を遠く離れて
もう2ヶ月弱前の話である。3月9日、ルミネが10%オフセールだったので、時間を気にせずに買い物をしたい&『こんなん見るやついねえって』の写真を買いたいということで、この日は劇場での予定はなかったが、大宮へ行くことにした。
以前、文田さんがおすすめしていた『駕籠休み』といううどん屋へ向かった。大宮駅から徒歩で30分弱歩く。近づくと大行列があり、店の場所はすぐにわかった。
なんだかとてもフォントの圧が強い。もしかして電波系の店なのかな……と怯えつつ列に並ぶ。
途中「通常の麺売り切れのため、つけ麺用の麺になります」とのアナウンスがあった。通常麺が先に売り切れるのは、珍しいなと思った。
並んでいる間に、ファイルにつづられたメニューが回ってきた。グランドメニューはワープロで打ってあったが、月替わりメニューがこれまた圧の強い筆文字で書いてある。なんだかよく読めないけど、辛味うどんで大根おろしっぽいのでこれにしようと決めた。
40分ほど並んで、これでは劇場の合間に来るのはむずかしいから今日来ることができてよかったと思った。店員さんは全然電波でも気難しくもなかった。辛味うどんを注文すると、「このお店は初めてですか?」と聞かれ「はい」と答えた。
ひとまずお手洗いへ行き、セルフサービスのお水を持って席へ戻ると、そこには
一本の大根がおろし金と一緒に置かれていた。
店員さんが近づいてきて「これをご自身でおろしてください」と言った。
そんなことがあのメニューに書いてあったのか? よく読めばよかった。「初めてですか?」と聞いたのは、一見さんしかこんなイカれたメニューを頼まないからか?? 戸惑う私に、「残った大根はそのビニール袋に入れてお持ち帰りください」と店員さんが続けた。
店内をそっと見まわしてみても、大根を丸ごと一本すりおろしている客は他にいない。けれどどうしようもないので、大根おろしと向き合うことにした。
大根は激情に任せておろすと辛味が増すと聞いたことがある。荒く擦ることにより辛味の成分が砕けてよりいきわたるのだとか。必然的に一番辛い根の先からおろさざるを得ないので、できるだけそっと作業してみた。
大根を一本のまま握って動かすのは、非常に疲れた。そこそこでやめておいたが、それでもうどんの味がわからないほどの辛味大根おろしができてしまった。
会計を終えると、店員さんが「再来店時割引クーポン(初回の人限定)」をくれた。最初に初めてかどうか聞かれたのは、このためだったのだ。店員さんを疑った自分を恥じつつ、店を後にした。
うどん(小)大根一本付き 780円
コマンダンテの大宮セブンお披露目があった会場の脇を通り、劇場へ向かう。あの会場の閉館を兼ねたイベントだったような気がするけどまだあるんだな、もうコマンダンテはいないのに、としんみりしながら氷川の参道を歩いた。
劇場では無事に生写真を買えた。完売の寄席が終わった後で、ロビーに活気があった。単に人が多いだけでなく、アイロンヘッドがチケット手売りをしており、カゲヤマは単独のチラシを配っていた。
なぜチラシ配りを? 手売りでなく? と疑問だったが、カゲヤマの二人がチケットを持参するのを忘れたのだと後で知った。
それからルミネへ向かったが、かばんにほとんど丸々一本の大根が入っている事実と文字通りの重さに耐えかねて、前から買うと決めていた靴とシャンプー以外はろくに見もせずとぼとぼと帰った。
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