10/8 数年通ってようやく

数年通ってようやく美容師さんと談笑することができた。

数年前に今の美容室を利用しはじめたのだが、これまでの美容室利用体験と違って、担当美容師さんがまさかの一言もしゃべってくれないスタイルの方だった。正確には、私には一言も雑談を振ってくれない、ということだ。もしかしたらほかのお客さんとはもっと楽しくやっていて、setsukoだけが嫌われ疎まれているのでは?という被害妄想にしばしば陥ったものだ。それに髪型や髪色の相談も、しばしば私たちの意見は食い違っていた。

マンネリ期とでもいいますか、世界観が合わないし、なんか無視されてるし、いい加減美容室変えようかな。と思いながらも予約を取って、昨日この美容師のいる美容室に足を踏み入れた。

そこで何気なく「寒いですね、台風が来るとか」という世間話から(さすがに一言二言くらいは話す)、私が週末に海釣りを予定しているという話をしたところ、「釣り…ですか!?」「何釣りでしょうか」「沖に行く船はどうやって調達するんですか?」などとまさかの質問攻めにあい、“釣り”に異常に食いつく美容師さんという想定外な光景を目の当たりにした。実はこの方、かなりの釣り好きで、私のようなにわかでは比べ物にならないくらい「ガチ」の腕前をしていたのだ。

いつもショートボブを維持していて、今日のオーダーも伸びたところを切る程度のもので、所要時間はおよそ1時間以内に収まったが、その1時間はフルフルで釣りトークに花を咲かせた。「やっぱりエサ釣りは邪道ですよ」「ブラックバスにも2種類があってね…」など、今まで見たことないくらい情熱的に話す美容師さんに圧倒されながらも、楽しく会話することができた。さらに、釣りトークしながら髪を切り進める中で、「髪の色にメリハリをつけるとかわいいですよね」といったような、髪への意見をポジティブに擦り合わせて行こうとする意志も彼から見られた。今まで私がいろいろ相談しても何だか不服そうだったくせに。何だか営業マンの教科書に載ってしまうんじゃないかっていうくらい、“人間は共感によってコミュニケーションし、共感できる相手とは合意しやすくなる”という法則をまざまざと見せつけられた。いや、この場合、営業されるべきなのは私のほうなのだが...と思いながらも、鏡越しにニコっと笑ってうなずいた。

ものすごく大きな学びがあったわけじゃないけど、悪い気はしないなという程度、意義のある体験をしたなと思える一日でした。この美容室には、もうしばらく通おうかと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?