11/9 生命の庭

朝目覚めた時に真っ先にしたことは、庭園美術館の営業時間の確認と、友人に送るLINEの文章の推敲だった。

今日近くに寄るから、もし時間があったら1時間でいいからお茶できないかな?聞いて欲しいことがあるの。

午前中に業務や家事を済ませ、午後出かけた。庭園美術館は原美術館の次に好きな場所だ。昨日の登山の筋肉痛が激しく、茫然としながら庭の入り口に向かって歩く。庭園美術館は珍しく予約制を取っておらず、今でも営業時間内であればいつでも訪れることができる。

今日見にきた展示は、「生命の庭」。

コンセプトについての説明が書かれたパネルを読み、釈然としないところもあったが、ひとつひとつの展示は素晴らしくそれぞれに発見があった。中でも康夏奈(吉田夏奈)さんと、青木美歌さんの作品がとても印象に残った。とくに康夏奈さんの、山肌の複雑な地形や植生を鉛筆、アクリルで柔らかく刻むようになぞっていく絵画作品は、ずっと見ていたい気分にさせてくれた。

良き作家に出会えた喜びを噛みしめながら、次の用事に向かう。が、足取りは重たい。というのも今日は、共通の友人の死、それも半年前にすでに亡くなったことを黙っていた経緯も含めて相手に伝えなければならないからだ。会話の中でもさりげなく「●●くんがあの時にさ…」と楽しく話す彼女にこの半年間曖昧な笑顔を向け続けてきたけど、もうやめることにした。急逝のニュースは訳あって隠されたのだが、人の死は隠蔽されたり、忘れ去られたりしてはならない。そのことを、この半年間ずっと考えさせられてきた。

夜、帰宅して米を炊いて豚汁を作った。暖かくて花の飾ってある自室が愛おしい。模様替えを計画しようと思い立つ。生まれて初めて粗大ゴミを捨て用と思う。生活で大きなゴミを出すのは、何だか不思議な気分だ。ろくに働きもしないのに、立派に食い、大きなうんこを平気な顔でしてしまってるような恥ずかしい感覚がする。

ご飯を食べながらスマホで康夏奈さんについて調べていたら、今年の2月に逝去していたことを知りショックを受ける。

さっき、可愛がっていた後輩の死を初めて知った友人の顔を思い出したが、取り乱すことなく受け入れ、その後も別の話題で笑ったりしていた。悲しみは後からやってくる。誰かを失った時、あまりにも突然な出来事に戸惑って、置き去りにされた気分になるものだ。もう一度生命の庭へ。

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