ファイザーの決算資料からみるBiontechワクチンまとめ

全文無料でご覧いただけますが、「タメになったよ!」という方がおりましたらご支援頂けますと今後のモチベーションになります。


ファイザーの決算が日本時間2020年10月27日夜に発表されました。
コロナのせいで既存薬の使用量が減った関係で売上は下がっていますが、大きな問題はない決算内容だったと思います。

画像1


今回はファイザー自身というよりも、決算内容で報告されたBiontech(BNTX)との共同開発しているCOVID-19ワクチン(ワクチン)関連について、どのように決算報告されたかを見ていきたいと思います。
番号①~で記載しているものは決算報告書から抜き出した箇所になります。
また僕のコメントを「はっさくコメント:」として記載しています。

<臨床試験について>
まずはこれまでのワクチン開発状況のおさらいを下記のように報告しています。
① 2020年9月、ファイザーとBioNTech SE(バイオンテック)は第3臨床試験のCOVID-19ワクチン試験登録者数を、当初の目標である最大3万人から最大約4万4,000人に拡大しました。
この拡大により、試験参加者の多様性がさらに高まり、16歳以下の若年層や慢性安定型のヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎、B型肝炎の感染者を含め、安全性と有効性に関するデータを追加で提供することが可能になります。
また2020年10月、ファイザーとバイオンテックは、FDAから12歳の若年層の青年期患者の登録許可を得ました。

はっさくコメント:臨床試験人数を増やした目的は、他の疾患を持つ人に対してワクチンを使うことの安全性・有効性を調べるためだったようです。

② 2020年8月、ファイザーとバイオンテックは、ワクチン候補の米国フェーズ1試験から追加安全性および免疫原性データを得ました。
30μg含有のワクチンは2回目の投与から7日後に若年成人(18~55歳)において、SARS-CoV-2の無力化幾何平均力価(GMT)が、SARS-CoV-2の回復期患者38人の血清のパネルのGMTの3.8倍であることを示しました。また、高齢者(65~85歳)では、このワクチン候補は同じパネルのGMTの1.6倍の中和GMTを示し、若年者と高齢者の両方において強力な免疫原性を示しました。

はっさくコメント:ようするに体の中でワクチンに対抗してくれる抗体が増えることを確認しました、ということです。この抗体量で多くの人がコロナにかからなくなるかを調べているのが今行っている第3相臨床試験になります。

③ BNT162b2の投与は、すべての患者さんにおいて、20%未満の患者さんで軽度から中等度の発熱が認められた。

はっさくコメント:第2相臨床試験で確認された副作用は発熱程度とかなり軽微なもので特に問題ありません。

<ワクチンビジネスについて>
④ 2020年9月、ワクチン2億doseをEU加盟国への供給案を欧州委員会(EC)と合意し、追加で1億doseのオプションを付けました。
供給は、臨床的成功と規制当局の認可を条件に、2020年末までに開始される予定です。また現在、ECとの入札交渉中になります。

⑤ 2020年8月、ワクチンをカナダに供給することで合意しました。
臨床的成功とカナダ保健省の承認を条件に、2021年までの間に契約を締結するとしています。
また契約の詳細は明らかにされていませんが、納入時期と数量について協議しています。

⑥ 2020年7月、ワクチン1億2,000万回投与する契約を日本と合意しました。
臨床的成功と薬事承認を前提としており、納入は2021年前半を予定しています。
また契約の詳細は明らかにされていませんが、納入時期と数量に応じた条件となっています。

⑦ 上記の契約に加えて、世界の他の先進国および新興国の複数の国々と、試験成功を条件に供給契約を締結しています。

はっさくコメント:
EU向けは合計3億dose、カナダは未定、日本は1.2億dose、その他いくつかの国と供給契約を結んでおり、単価は交渉中とのことのようです。
記載はありませんが、もちろんアメリカにも供給する契約があります。

<申請状況>
⑧ 2020年10月、ファイザーとバイオンテックは、欧州医薬品庁(EMA)へのローリング申請を開始しました。
EMAがローリング審査を開始することを決定したのは、前臨床試験および初期臨床試験で得られた心強い予備的結果(=ワクチンがSARS-CoV-2を標的とした中和抗体およびTH-1優性CD4+およびCD8+ T細胞の生産を誘発することを示唆)を受けてのことです。
バイオンテックとファイザーは、EMAと協力して最終的な販売認可申請を促進するためのローリング審査プロセスを完了させる予定です。

⑨ 2020年10月、カナダへのローリング申請の開始を発表しました。
ローリング申請は、安全性と有効性のデータや情報が入手出来た時点で提出することを可能にする保健省の暫定命令に基づき受理されました。
ローリングレビューによりカナダ保健省は情報が入ってくるごとにレビューを開始することが出来、全体的なレビュープロセスを加速させることができるようになります。

はっさくコメント:
日本でも第3相臨床試験を開始してますね、決算報告には記載されていない国がたくさんあります。

<ファイザーとBioNTechの契約>
⑩ 2020年4月9日、ファイザーはBioNTech社はCOVID-19感染の予防を目的としたmRNAベースのコロナウイルスワクチンプログラム「BNT162」を共同開発するグローバル契約を締結しました。
この契約に関連して、ファイザーはBioNTechに2020年第2四半期に7200万ドルの一時金を支払いました。
また、ファイザーはBioNTechの普通株式に1億1300万ドルの株式投資を行いました。
またファイザーは、BioNTech社の引受け増資の一環として、BioNTech社の普通株式に5,000万ドルの追加投資を行いました。

下記はファイザーの決算数字内における、Other (income)/deductionsで計上されているBioNTech関連費の補足になります。
⑪ 2020年第3四半期の損失には、特に以下に関連した1億3,100万ドルの未実現損失が含まれています。
Allogene Therapeutics, Inc. (Allogene)に投資しています。2020年最初の9ヶ月間の利益には、とりわけ、当社のAllogeneへの投資に関連した2億4,300万ドルの未実現利益、および当社のBioNTech SEへの投資に関連した1億5,400万ドルの未実現利益が含まれています。
2019年1~9ヶ月間の利益には、とりわけ、CortexymeおよびSpringWorks Therapeutics, Inc.への当社の投資に関連した1億1,500万ドルの未実現利益が含まれています。

画像2

下記は決算報告に使用されたプレゼンテーションのうちワクチン関係になります。
これまで記載した内容のまとめですね。

画像3

以上が決算報告の内容になります。


また蛇足ですが、第3相臨床試験結果が発表されないこが気になってので少し調べてみたらmファイザーの決算報告と同じ日(つまり10/27)にファイザーのChief Executiveアルバート・ブーラ博士が下記のような発表をしています。

「来週火曜日の大統領選挙前に早期のワクチン結果が出る可能性を否定した。
ファイザー社の臨床試験では、4万4千人を対象にワクチンの試験が行われており、そのうち半数がワクチンを受けた人、半数がプラセボを受けた人である。
試験のプロトコルでは、どちらかのグループの少なくとも32人がコロナにかかった後、最初の結果を見ることができます。
そのうち26人以上がプラセボ群であれば、ワクチンは有効である可能性が高いと考えられる。
Bourla博士は、最初の分析は10月末までに来るだろうと予測していました。
しかし、10/27までに32ケースのコロナがまだ発生していないと述べた。
また結果を分析するには少なくとも1週間は必要であり、選挙前に回答が得られる可能性は低いと述べた。
Bourla博士は、外部委員会がワクチンが有効であると判断した場合は結果を報告するが、決定的な結論が出ていない場合は報告しないと述べた。
Bourla博士によると、同社はすでに「数十万」の用量を製造しているという。
年末までには少なくとも4000万本、来年3月までには1億本になると予想している。

Reference:
https://s21.q4cdn.com/317678438/files/doc_financials/2020/q3/Q3-2020-PFE-Earnings-Release.pdf
https://s21.q4cdn.com/317678438/files/doc_financials/2020/q3/Q3-2020-Earnings-Charts-FINAL2.pdf
https://www.nytimes.com/live/2020/10/27/world/covid-19-coronavirus-updates#pfizer-will-not-deliver-vaccine-results-by-the-end-of-this-month-its-chief-executive-says

以上になります。
また新しいニュースが出てきたら報告していきたいと思います。

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?