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母の捨てた玩具

幼い頃、母に勝手に捨てられた玩具を四十路にしてやっと買い直した。

物は殆ど持っていないが、どうしても好きだった物を失ったまま死んで行きたくないと思ったのがきっかけだった。
ミニマリストだろうとケチだろうと、自分の為に持っていなくてはならないと強く思う物は必要なんだと思っている。

しかし平成の終わりくらいから密かに始めたこのプロジェクトだったが、何故5年近くも時間が掛かったかと言うと、80年代の玩具なんて令和の世の中にほぼ無いんだよ!
あるにはあっても遊び倒されて汚れていたり、デットストックの取り扱いがあると噂のお店に行くも惜しいこれは90年代産のデットストックだ!とか、オークションサイトで買うもパーツが加水分解して張り付いていたりとか、リメイクされたものを買いに行ってみるも令和風に洗練され過ぎていて当時のと全然違うぜ!とか、何万円も掛かったし、何度もガッカリもして諦めそうになったり、本当に苦労した。

自分から卒業しなかった、取り上げられた玩具が私の中で恨みになり、誰も遊んでない当時の物が欲しいと心の中で膿んで情念になっていた。
やっと私の元に帰って来てくれたので、もう思い残す事は無くなった気がしている。

ずっと人の顔色を伺う歪んだ人生だったが、今更やっと大人になれた気がしている。

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