ひかりふる路 東京新人公演 ~感想その3~

まえがき

本文は2018年当時、別アプリに記載していたものを転記したものです。大切な思い出として、一部編集しここに残します。

**********************************あれから11日――
雪組新人公演ひかりふる路、最後の牢獄の場面についての感想を書きたいと思います。
記憶は少し遠くなったかもしれないけれど、だからこそ鮮やかな部分がより引き立って思い出されます。

まず、本公演と新人公演では全く別の感情が動いてしまう。これは私が主演の綾凰華さんが好きだということを差し引いても、そうだろうと思うほどに最期まで別物でした。

「革命中心の物語の本公演」と「愛と友情中心の物語の新人公演」。
生田先生が描きたかったのはもちろん本公演の方だし、望海さんだからこそ挑めたのだけど、脚本としては一本物並みの重厚感のあるはずだったものを端折った感が否めなかったです。
単純に、脆く史実とは少し離れていようとも物語の軸がシンプルでにブレのない後者に感情移入しやすく純粋に感動しました。

そこまで引きつける力があった上での牢獄の場面。
主演ふたりだけの場面。

――言葉のやり取りが、気持ちのやり取りであり、それが主人公に感情移入した観客の心まで救っていく場面。

抜け殻のまま牢獄に閉じ込められると、そこには既にマリーアンヌがいてマクシムは驚くのですが、その「マリーアンヌ…!」と呼ぶ声が、なんとも言葉にしがたいほどに彼の本心が垣間見えるようでハッとさせられました。
綾マクシムは自分を滑稽だと思っていながら、まだマリーアンヌを信じたい気持ちがあって、それでいて、冷静であろうと質問をしていきます。ついに「ひとつでも真実はあったのか」と問うたとき、マリーアンヌの告白を受け、自分の描いた大義の意味や友が命を賭して自分に訴えたことの意味を真に理解し、その瞬間にマクシムの魂が浄化されていく様がまさに目に見えるようでした。

そして優しい声で、マリーアンヌとの美しい平凡な日常について囁き合うことで、束の間心を通わせてますます苦しみが昇華されていく様と、それがありえなかったことだと悟っても尚、まるでその平凡を一瞬で二人が生き抜いたかのようで、マクシムの魂は救われたのだと見ている側に感じさせてくれました。

額をコツンと重ねる二人は記憶や思いを通わせ合い、刑が解かれ、牢獄の外の世界から差し込む光に向かって歩きだそうとするマリーアンヌを押す手が本当に優しかった。そっとマリーアンヌを差し込む光の方へと向き直らせ、両手でそっと押し、数々の処刑を執行してきた右手を下ろしながら、微笑みを浮かべて左手で力強くマリーアンヌのこれからの人生を後押しする。そして自らは処刑台への歩を早めると、階段の一段一段をじっくり踏み締めて上がっていく。

ロベスピエールは全てを失ってはなかった。
壊れてしまったガラス細工もそのまま掃き捨てられることなく、氷が溶けていくみたいに棘を丸くしてそして昇華されていった。

それぞれの役のみなさんの、全ての向かっていく先・表現が合致していて、観客を迷子にさせずに物語を届けてくれました。
感動の舞台を届けてくれた新公メンバー全員に本当に心から感謝の気持ちを伝えたいくらいです。

最初から最期まで愛と友情の物語を届けてくれてありがとうございました。

あやなちゃん、よくがんばったね。
かのちゃんとのおでこコツンで着いてしまった茶色の点が可愛らしくも、しっかりと挨拶し決意を語ってくれていて、まだ少し迷子になっていたファンの心も救ってくれました。
新しいたくさんの素晴らしい仲間とともにこれからも素敵な男役さんを目指してください。

それにしても、良い新公だったなー(´︶`)♡

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