心拍する


たったたたたたっったたたったっったたたったたたたったた…
今日も地面を叩く雨の音

雨が降ると少しだけ気持ちが変わる
ずっと雨が降っていたら、世界は海だけになるのだろうか
世界にずっと水が溜まり続ける

たったたたたたっったたたったっったたたったたたたったた…
今日も地面を叩く雨の音

雨が降ると少しだけ気持ちが凹む
ずっと雨が降っていたら、お前とはもう会えないのだろうか
世界にずっと水が溜まり続ける


たったたたたたっったたたったっったたたったたたたったた…
今日も地面を叩く雨の音

雨が降ると少しだけ気持ちが晴れる
ずっと雨が降っていたら、心の濁りも流れるのだろうか。
世界からそっと水が溢れ始める


たったたたたたっったたたったっったたたったたたたったた…
今日も地面を叩く雨の音

雨が降ると少しだけ気持ちが陰る
ずっと雨が降っていたら、もう日の光を浴びれない気がする
世界にずっと水が流れ続ける。


あの日、あの時、あの場所、君といた、あの時、雨が降っていなかったら
僕の左手は、君の背中をさすれただろうか。

あの日、あの時、あの場所、君といた、あの時、雨が降っていなかったら
僕の右手は、君の肩を組めただろうか。

窓の外。帷の向こう。傘の下。君の横。
たったたたたたっったたたったっったたたったたたたったた…
今日も地面を叩く雨の音


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雨は好きですか?私は好きじゃありません。
小学校の時の運動会
中学校の時の合唱コンクール
高校の修学旅行
大学のサークル旅行
すべて雨でした。明日の予報も案の定雨です。
雨だと、髪もパサつくし、服も濡れるし、心も、気分も晴れません
私の本来楽しかったはずの思い出は、すべて雨が上書きしてきます。
生きていくのに、雨は必要だというけど、果たして私の人生に雨は必要だったのでしょうか。
私には到底わかりません。
ただ振り返ったらイベントごとは、いつも雨がいる。そんな気がします。

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ふと見上げた空が四角形な昼過ぎ。
空はいつもよりも喰われていて、濁っていました。
外はぼやけていて、自分の周りだけ、輪郭がくっきりしています。
夜になると四角形は黒くなって、少しだけ心が悲しくなります。
同じ空がこの世界にはずっと続いてるらしいです。
私の見ている空が雨空なら、お前の見ている空も雨空なのでしょう。
昔は、当たり前のように学校があって、当たり前のように、時間割を絶対として、行動していました。
いつも当たり前のように、お前の後頭部を見ていて。
いつも当たり前のように、お前の笑った時に見える奥歯を見ていました。
時間は流れるもので、あっという間に僕たちは卒業し、背中を合わせて、街を出て行きました。

俺もお前も普段は自転車通学だけど、雨の日はバスで学校に通っていて、バスに乗ってる間、少し静かにしないといけないのが、もどかしかったりもしました。
学校の中で、自由に、制限なく、はしゃいできた俺たちが、社会に馴染む、大人になる時間が、その時間でした。
ああ、大人になってしまった。
あの時間は社会と私たちの関係をチューニングする時間だったのかもしれません

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たったたたたたっったたたったっったたたったたたたったた…

道路を叩く雨の音。
隣にいるのに、お前の声は少しだけ細くて遠い。

たったたたたたっったたたったっったたたったたたたったた…

外に鳴り響く雨の音。
今の俺の隣には、もうお前はいない。



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ふと見上げた空が三角形な昼過ぎ。
雨粒は、世界を滲ませて、今自分が部屋で1人であることを強調してきます。
さてさて、今日の俺の部屋はどの世界よりも静かだ。
そっとイヤホンをして音楽を流します。
会ったこともない人の声を聞きます。
昔は、1日のどこかで必ず会ったことある人の声を聞いていました。

朝起きた時の家族の「おはよう」の声。
学校に着いたら友達からの「よぉ」の声。
授業が始まれば先生からの「はじめるぞ」の声。
家に帰ったら家族からの「おかえり」の声。

知ってる顔から出る知ってる声、知り過ぎた声。
とても心が落ち着くというか、自分が同じ今日を生きていると感じます。


あれから何年経ったでしょうか。僕の知っている顔は増えたと同時に、毎日見ていた顔は日に日に減っていきました。

共に新しい地球で旅を始めて、日々を闇雲に生き抜いていきました。

たまに地元に帰ってきても、見える風景はどこか違くて、お前も垢抜けていて、しっくりこない。

声だけが変わらないから、安心できる。



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少しだけ良かったと思っているんだ。
俺が平成に生まれてきて良かったって
携帯電話があって良かったって
声だけはいつも過去に寄り添ってくれるからさ。
いつだって当時の漢字にボタン一つで戻れるからさ
ん?
まぁ、きもいよな。
そうじゃないんだよ。
俺がもし戦国時代とかその時代に産まれてたらって話。
とっくのとうに初陣してて、死んでるかもしれねぇしさ。
昭和だってあぶねぇよ。赤紙に連れられてもう戦地で絶命しているかもしれない。
俺はお前みたいに運動神経高くねぇからさ、絶対死んでると思うんだよ。
平和で良かったよな。
らしくない?
うるせぇよ
でもこの薄い鉄板があるからさ、俺とお前は話せてるわけだし、文章の時もあるけど、当時に戻れるんだぜ。
過去はいつだって良いよな。
お前と話すと懐かしい話おもいだすわ
やっぱり過去を振り返ることが俺の楽しみになってるな。

人間が生きる理由ってなんなんだろな。
俺はこれから何を楽しみに生きていくんだろうな。
過去に縛られ、お前との楽しい思い出に浸って現実逃避してさ、何が楽しくて生きてんだよ。
きっとそれが楽しいから生きてんだろうなぁ。
まぁ、リアルを生きろって話だよな?
でもさ、別に俺はさ、結婚願望も碌にねぇし、そもそもガキ嫌いだしさ、現に彼女も今いないわけだけどさ、今日を生きてるじゃん。無駄に。
なんで生きてるんだろうな。
まぁなぁ。
いやなんかさ、コロナでさ、大学で会う人も限られてきてさ、サークル卒業したらほとんど会うやついなくなってさ、大学院に進んだら数少ない友達は学部卒で就職しててさ、知らねぇ間に俺だけ取り残されてるみたいな感じになるんだけどさ。
俺の過去は裏切らないんだよなぁって思うんだよ。
というかさ、過去はいつだって輝いてるんだからさ。
いや、お前それをいうなよ。
ガチで黒歴史だぞ。
いやなんかさ、
そうなんだけどさぁ
過去を振り返るのがさ、思い返すのがさ、
あの頃の俺に息吹を呼び込むためにさ、
生きてるのかもしれねぇなぁ
やっぱ当時の感じで思い出話に花を咲かせるのが楽しいわけじゃん。
だって現在なんて、生き抜くので精一杯なんだからさ。
過去形にして余裕持たせてねぇと、楽しめねぇよ。



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俺がまだ制服を着ていた頃、夜はお前と話せない時間だった。
我が家の夜は、ただただ短かった。
代わりにひたすら鉄板を触りまくることで、お前と俺は繋がっていた。
なんとかなんとか家での俺を鉄板の中だけは、お前たちにとっての俺になろうとした。

授業参観は嫌いだった。
学校での俺を見られたくなかった。
両親の見ている俺は多分ここにはいないからだ。
家の中で画面の中にいる俺がここでの俺だ。
何よりも恥ずかしい。

それにオシャレをして授業参観にこないでほしい。
お互い少しイメチェンして、垢抜けて、久しぶりに会って「お前変わったなー!」くらいならいいけど、今の俺と参観日の両親は、そんな領域を通り越して「だれ?」って言わざるを得ないくらい距離が離れている。

最近、お前と直接会うことは減ったけど、夜もお前たちとの俺でいられるようになった。


ああ、今日も雨が降る。
俺は外に出れないけど
お前と今日も繋がっている。
雨空が繋がっている。
世界が繋がっている。
心が、心が繋がっている。
たまに離れたくもなるけど
お互い、明日も雨空だから。
きっともう暫くは繋がっている。



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たったたたたたっったたたったっったたたったたたたったた…
今日も地面を叩く雨の音。

雨が降ると少しだけ気持ちが沈む。
ずっと雨が降っていたら、俺はもう家から出れなくなるのだろうか。
世界にずっと水が溜まり続ける

たったたたたたっったたたったっったたたったたたたったた…
今日も地面を叩く雨の音。


雨が降ると少しだけ気持ちが濡れる。
ずっと雨が降っていたら、お前とはもう会えないのだろうか。
世界にずっと水が溜まり続ける。

たったたたたたっったたたったっったたたったたたたったた…
今日も地面を叩く雨の音


雨が降ると少しだけ気持ちが晴れる。
ずっと雨が降っていたら、お前とずっと話せていられるのだろうか。
世界からそっと星が輝き始める。

たったたたたたっったたたったっったたたったたたたったた…
今日も地面を叩く雨の音。

雨が降ると少しだけ気持ちが瞬く。
ずっと雨が降っていたら、同じ地球で生きていると証明できる。
今日もお前と同じ世界にいる。

あの日、あの時、あの場所、君といた、あの時、雨が降っていなかったら
僕の左手は、君の背中をさすれただろうか。

あの日、あの時、あの場所、君といた、あの時、雨が降っていなかったら
僕の右手は、君の肩を組めただろうか。

窓の外。海の向こう。空の下。心の傍。
たったたたたたっったたたったっったたたったたたたったた…
今日も地面を叩く雨の音。

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