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自分はどんなに見えているのだろうか

電車に乗り込んでシルバーシートの方に行くと座席は全て埋まっていた。
手前の席に座っていたお爺さんが立ち上がって
どうぞと手を差し伸べている。
いや大丈夫ですと云ったが、どうぞどうぞと繰り返すので、
無碍に断わるのも見苦しいと思い、会釈して座った。
そのお爺さんは次の駅で降りるのかなと思っていたが、
ずっと鉄棒に掴まって立っていた。

長めの白髪であご髭を貯え、猫背でそのまま首が前に垂れ下がっている。
かなりくたびれた様子で、こちらより高齢に見える。
どうして席を譲ってくれたんだろうか。
段々、自分がどのように見られているのか不安になってきた。

髪はてっぺんが頼りなくなってきてはいるものの、
周囲の髪でなんとかやりくりできている。
白髪も20%程度に持ちこたえている。
肌もつやつやとは云えないまでも保っている。
体型も多少猫背であるがスクッと立つように心掛けている。
服だって洗いざらしのシャツを着てズボンに折り目もある。
小ぎれいなお爺さんを旨としている。
どこに席を譲られるような貧相が見えたのか?
ひょっとするとこの老人には超能力があって、
重病や死相の現れを察知したのだろうか?どんどん心配になってきた。

自分の事は解っているようで解らないということか。
背中にユーラシア大陸のような赤アザがある。
もっとも鏡で見ているので反転してユーラシア大陸かどうかは解らない。
後頭部も見たことはない。
床屋さんが仕上がり具合を鏡で見せるがこれも虚像にすぎない。
実は自分には見えないところが沢山あって、
ましてや自分の心の底に潜んでいることまで
解らないままなのかも知れない。
自分ってどんな人間に見えているのだろうか。

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