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名誉の死

ヒトラーは、自分はドイツと結婚したと公言していたので、
生身の女性との結婚は国民への手前、公には出来なかった。
それでも人一倍欲求の激しい体質から、年若い愛人エヴァ・ブラウンを
身元に置いた。
山荘に住まわせ、存在を隠し逢瀬を重ねた。
そのエヴァが、ヒトラーや身内の反対を押し切ってベルリンに移り、
結婚を要求した。
密かに地下室で結婚式が営まれた。
その結婚は敗戦で夫と共に処刑される運命を意味していた。
そして夫と共に自死に臨み果てた。
マリー・アントワネットの処刑は、フランス革命の完成を意味していて、
ルイ16世処刑後の裁判では、不条理な追求ばかりであったが、
敢然と応え、精神を乱すことがなかった。
そして、処刑の際、死刑執行人の足を踏んでしまったことに
「ムッシュ、ご免なさい、わざとではありませんよ」と詫びる気丈さを
残していた。
エヴァもマリーも、逃げる機会はいくらでもあったろうに
命を掛けて守る名誉心が勝ったようだ。
それでも、逃げて逃げて、どんなに無様でも最後の一瞬まで
自らの命を守る気概の方を褒めたいものだ。

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