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ハダカデバネズミ

お風呂から上がって、裸のまま台所に行き
冷蔵庫から冷たい豆乳を出してグイッと飲んだ。
炊事をしていた家内が振り返って言った。
「ハダカデバネズミ」
なんのことか分からなかった。
裸でいることを咎められたのかと思った。
もう50年も一緒に居るのに今更裸でいることで
とやかく言われなくても・・・。
飲み干したグラスをテーブルに起きながら
「なんだ、それ?」と訊くと、毛のないネズミのことだという。
先日テレビで紹介されていた異形のネズミの姿と似ているそうだ。
 
気になって早速ネット検索してみると、とんでもないネズミで、
長寿の可能性をいろいろ秘めた重要な研究対象であることに驚いた。
 
ハツカネズミというとその名のとおり、寿命が二十日なのかと
勘違いしていたが、実は二十日は妊娠期間ということらしい。
それでも1~2年という短命で気の毒だ。
繁殖力が高く、成長が早く、寿命が短い、そして人と同じ
哺乳動物となると、投薬実験などの作用がまるで映画を早送りして
結末を見られる訳で、実験動物として理想的なのだそうだ。
またまた気の毒に思う。
 
ところが、中東・アフリカの地下トンネルに生息する
ハダカデバネズミは、破格の寿命をもつ。
なんと堂々の30年という。
ハツカネズミの15倍、人の寿命を80年とすると1200年となる。
 
天敵はヘビなので、安全な地中に住み、気温の変化に対応する
必要がないので毛がなくなった。
紫外線の害もない。無駄に動かないから活性酸素による酸化が少なく
老化しないということだ。
老化細胞を蓄積せず代謝してしまう。当然がん細胞が巣くう余地はない。
血管は若々しく柔軟性を保つ。
細胞が自らの一部を分解して修復するオートファジーが
働いているともいわれる。
ハダカデバネズミのように、地下トンネルで静かにしていれば
1200年生きられるといわれてもあまり嬉しい気持ちは湧いてこない。
 
それにしても、ハダカデバネズミという命名には違和感がある。
俗称かと思いきや立派に学名として通用している。
蔑称のきらいがあるし、工夫もなく、安易で、
悪童が弱いものいじめをして、はやし立てている感じもする。
なにしろ、ハダカデバネズミと揶揄された
我が身としては抗議したい気分だ。
 

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