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現代の生類憐れみの令

 1603年徳川時代が始まって80年、綱吉が五代将軍になって7年後、
稀代の法令「生類憐れみの令」が発布されました。
戦国の時代から天下泰平の元禄時代に差し掛かろうという頃です。
平和が続いて心に余裕が出来ると、
人は優しい眼差しで世の中を見直すようになるようです。

 綱吉の命により、現在の中央線 中野駅の周辺には
「御囲 おかこい」という巨大な捨て犬の保護施設が建造されました。
16万坪の敷地に25坪のお犬様の宿舎建物が290棟、
459カ所の子犬養育所が整備され、総工費20万両、
今のお金で120億円というから、世界的にも類を見ない規模でした。
 
 世界が激しい戦火にまみれた第二次世界大戦の終戦から、
来年の2025年で80年を迎えます。
綱吉の時代と同じような気運が世界で現れてきています。
生類憐れみの令は現代では「アニマル・ウェルフェア」と呼ばれます。

 2018年にイギリスでは、子犬や子猫の販売を禁止する
「ルーシー法」が制定されました。
2021年にはフランスの上院で動物愛護法案が可決されて
ペットショップでの犬猫の販売が今年からできなくなります。
フランスでは、2人に一人がペットを飼い、毎年10万匹のペットが
捨てられていて、マクロン大統領は動物愛護の方針を出したようです。
サーカスの動物もイルカなどのショウも虐待だとして
それらのショーができなくなります。

 
 10年くらい前に、羊毛業界で子羊の尻に蛆がたかるというので、
ミュールシングという尻の皮を剥ぐ処置をしてきたのを止めよう
という運動が起きました。ミュールシングをしていないことを
宣伝文句にしている羊毛製品を見掛けるようになりました。
 
 さて、この動物愛護・アニマルウェルフェアの機運が進んで、
とうとうそこまで来たかというニュースがあります。

 エビやカニなど甲殻類は痛みを感じるのかどうか、
2005年からEFSA(欧州食品安全機関)が研究委託しました。
その結果、痛みを感じているということになり、
スイスでは、ロブスターを熱湯に入れることが禁じられました。
イタリアでは生きているエビを氷に載せているとして
罰金刑が課せられたといいます。

 我が国が世界でエビの輸入量が4番目という大量消費国としては
注目しなければなりません。
伊勢エビの生け造りやエビの天ぷらは残酷だと欧州諸国から
批判されることが現実味を帯びてきました。
カニのように、早急にかまぼこでエビを再現する技術が
脚光を浴びることになるかもしれません。

やり過ぎだろう綱吉さん!と笑っている場合ではありません。

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