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“ほんの一瞬だよ”

スーパーからの帰り道。
暑過ぎるお天気のせいか、歩いてる人は誰もいない。

私は運転中の車の中で、。
交差点が赤になると、T中学校の校門にある桜に、ふと目が止まった。


“ほんの一瞬だよ”

という言葉が降ってきた。


そしてフッと思い出したは数年前の7月。市議会議員選挙の投票日。
ミーンミーンと蝉の大合唱の中、私とテル君は投票所のT中学校に来ていた。

幼なじみのテル君は少し足が不自由で、それとは無関係ないけど40歳過ぎても、それまで一度も選挙に投票してこなかった。
そんなテル君に軽く説教して、やっと連れ出した選挙だった。
体育館の入り口にはスロープがあったけど、そこに行くまでに階段がある。
テル君はゆっくりと慎重に、手すりを支えにしながら、その階段を上がっていた。

「投票なんて、誰が行っても変わんないって。」
そう言って、私とケンカになりそうだったテル君が、今ここにいる。歩いてる。
動かないものも動くときは動くんだなぁと、いつもと違ううれしさを感じた夏の日だったことを思い出した。


信号が青に変わっていた。
ハッと気づいてハンドルを回す。


“ほんの一瞬だよ”
って言葉がさっき浮かんだけど。

あの桜に言われた?


最近のテル君、大盛り上がりだった都知事選のYouTubeも、結構見ていたみたい。
テル君、すこし変わったね。



ふと桜を見ただけで、こんなにいろんなこと思い出すんだなぁ、って。
そう感じた。


桜も年々、歳を重ねてるのに、なんだか全く年とってないように見えるよ。
こっちは年々見た目も変わってるっていうのに。


“ほんの一瞬だよ” って、桜がそう言ったように、聞こえたんだよね。


そう、人生なんてほんとは一瞬なんだよ。
何かやってもやらなくても、あっという間に過ぎていく。
ほんとは時間なんてなくて、体験したような記憶があるだけなんじゃないか?

だって、ほんとのところの宇宙の仕組みは誰にもわからないんだから。

ほんの一瞬、の今。
ほんの一瞬、の今日。
それがいつか、ほんの一瞬の私の人生、に変わっていく。

長く思えるのは生きてる間だけ。

平均寿命までは時間があるでしょ? そう思えるのも今だけ。

時間は自分に与えられたプレゼント。
でもそのプレゼントの長さ、大きさ、広さは誰にもわからない。


さぁ何する?
どう生きる?


だって、“ほんの一瞬だよ”



#創作大賞2024 #エッセイ部門

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