#17 映画「パーフェクトブルー」感想

理想と現実の乖離に悩める2人の女性が過激な手段をとりながら自己を追求していく物語である。
今敏監督の処女作。今監督の作品は『パプリカ』が有名だが、本作もかなり今監督の作家性が発揮されている。気持ち悪いのに惹きつけられる。いや、気持ち悪すぎて見たくなる。昨今の綺麗すぎるアニメでは絶対に感じられない魅力があった。

ジャンル ▶︎ホラー
要素 ▶︎パーソナリティ、アイドル、芝居
キャッチコピー ▶︎「もう自分のことがわからない」
興行収入▶︎8000万くらい?(76.8万ドルらしい)

【脚本】
村井さだゆき氏が担当。
▶︎今見ているのは現実か妄想か。この作品を初めて見て、これを見極めるのは至難の業である。この作品の特徴に劇中劇が挙げられる。主人公・未麻はアイドルから女優(役者)に転身する。しかし、演じる役がアイドル時代とはかけ離れたものであり、徐々に心を疲弊していく。その疲弊している姿が、お芝居としての姿なのか彼女の本心なのかが全く分からない。脚本がお見事としか言いようがない。
▶︎「あなた誰なの?」は本作を象徴するセリフとなっている。自分は何者なのか、どうありたいのか。これは人間が永遠に悩み続ける課題だ。本作もこれがテーマになっている。だからこそ、20年以上経って見ても色褪せないのだろう。本作の主人公・未麻もここに葛藤を抱えている。ラストシーンで「私は本物だよ」というセリフはその葛藤を克服したセリフと言えるだろう。
▶︎「現実と虚構」という対立が本作では描かれている。というか、今監督作品の共通したテーマなのかもしれない。現実の中に虚構を軽やかに交えることで視聴者を混乱させる。クリストファーノーラン監督の『インセプション』と似ている。視聴者は必死に頭を使い物語を理解しようとする。だから飽きない。

【演出】
松尾衡氏が担当。
▶︎脚本にも通じるが現実と虚構をミックスした映像美が、実に気持ち悪く素晴らしい。特に、ラストシーン。マネージャーのルミが未麻に扮するシーン。本物の未麻の目にはアイドルの未麻に写っている。しかし、鏡に映っているのはアイドルの姿をしたルミの姿なのだ。実にアニメらしい表現である。
▶︎あと、オタクの描写が特徴的。ミスリードのためのオタク・内田守は見ただけでヤバいやつだとわかるくらい不気味な風貌だった。他にアキバに群がるオタク、アイドルのライブに出てくるオタクなど、見ただけでオタクとわかるキャラデザだったと思う。規制の厳しい今では難しいかもしれない。

【音楽】
幾見雅博氏が担当。
今監督といえば平沢進、というイメージだが本作は違う。

【総評】
監督は今敏
見ていて圧倒される物語であった。とにかく不気味。しかし、魅了されてしまう。今監督の作家性が存分に発揮されている。見応えのある作品だった。

【満足度】
90点

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