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山形の街の詩情を伝える写真サイト「山形の街並み」

山形の町には、なんともいえない詩情がある。
空襲で焼かれなかったので、古い建物が多く残っていたり、町割が昔のままだったりする。そのことに由来する前時代的ノスタルジアが漂うのはもとより、昭和末期から平成はじめ、わたしが学生時代を過ごした時期のこの町の空気の抒情感もまた変わらずに在る。あちこちの建物は建て替わって新しくなっても、それは変わらないのだ。
大学を出て以来、いろんな町に住んだし、仕事で東北中の町を訪れて滞在してきた。しかしこんな詩情タウンは他に無い。セイシュンの思い出が詰まっているというバイアスを抜きにしてもそう思う。

わたしが余所者でいつまでも観光客視点から見ているからというのもあるのかもしれない(それでも生活者として暮らして15年だ)。しかし地元に生まれ育った人で、いや、おそらくは、生まれ育ったからこそ、より深くその詩情を感じ取り、すぐれた写真に表現し続けている人がいる。

初めて知ったのは10数年以上前だが、1999年から続いている老舗サイトだ。月に2〜3本の投稿を25年続けておられる。もはや山形市内で行っていない場所は無いのではなかろうか。
建築/街歩き系の内容が想像されるサイト名とはうらはらに、建築そのものではなく、町の風景やオブジェ、人物などが街と織りなす一瞬を捉えた写真が並ぶ。味のある建築もその背景として写り込む脇役にすぎない。
「名もなき裏通りにこそ、真の飾らない美しさがある」とたびたび記しておられる通り、通りから一本入った路地や脇道に題材になっているものも多い。

写真はどれもこれももう溜息が出るほど上手い。切り取られた光線の加減や空気感はわたしが愛してきたこの街の情感そのものを表現してくれている。静かで穏やかで、そしてどよーんと気怠いアンビエンス。その空間の音や匂いまでが画面から漂ってくる気がする。
加えてコテコテの山形弁によるセリフがいい。廃物や雑草までが魂を持ち、語り始める。「声に出して読みたい山形弁」である。ぜひ音読をお勧めしたい。

地名がいっぱいあり過ぎてどこのがいいかわからないとお思いであろう。どこもいいんだけど、おすすめは市内中心部と郊外の農村集落です。山形市のGoogleマップを参照しながらどうぞ。

PS.

折しも、雑誌 @Premium の今月号「日本の美しい町を旅する」には山形が取り上げられている。
札幌、富山、高松、松江、奄美と並んで、山形が「美しい町」として紹介されている。

(Kindle unlimited に入ってれば無料)

紐解いてみれば文翔館(旧県庁)、Q1(旧市立第一小)、旧済生館などの王道からスーパーエンドーのゲソ天といったニッチ路線まで過不足ない感じだ。

そのあたりももちろんいいが、山形を訪れたらぜひ、クルマもあまり通らない裏通りをそぞろ歩いてほしい。そして「山形市の街並み」の写真のヴァイブを実際に感じてほしいものだ。


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