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【ストーリー雑感】デリシャスパーティ♡プリキュア 第5話「なかよくなりたいのに…!ここね、初めてのおともだち!」

■ あらすじ
 ここねと距離感を感じるローズマリー。そしてここねも、なかなか本心を打ち明けられずに悩んでいる。そこで、ゆいは三人で買い物に出掛けようと提案する。

■ スタッフ
脚本  :金子香緒里
絵コンテ:カトキハジメ
演出  :岩井隆央

■ メインテーマ
・ここねとの関係構築と肯定(名前を呼ぶ、コンプレックスの克服)
(・「Pretty Holic」の販促)

■ プロット
・ここねから避けられていると感じるローズマリーのため、Pretty Holicへお出掛けする
・ブンドル団との戦闘を通して心中を吐露する
・和実家での料理作りを通して親交を深める

■ 感想
 今回注目したいのは、ここねの意識の変化だ。
 彼女は「成功」か「失敗」かの二元論的な考え方に捕らわれている。友達と普通に接すればよいと言われれば、「普通とは何か?」が分からず苦悩する。
 そして、失敗を過度に恐れている。ゆいにコスメを勧めたときも、押し付けがましくなってしまったことを謝罪している。これは自身の行為を失敗であると判断したからだ。
 それというのも、彼女の根底には「嫌われたくない」という強い強迫観念がある。だからこそ、失敗というマイナス評価をゼロベースに戻すために謝罪をし、関係を均衡に保とうとする。

 それに対して、ゆいは「どうして謝るの?」と疑問を投げかける。
 ゆいにとって、友達の失敗はネガティブなものではない。小さな失敗にとらわれるここねを「そんなこと」と一蹴し、失敗しても頑張ろうとする姿が格好いいと肯定する。彼女にとっては成功も失敗も枝葉末節であり、すべてをひっ包めてその人自身なのだ。

 そんな彼女の価値観に触れることで彼女の心は氷解し、自身の強迫観念が主観的なものにすぎなかったことを理解する。
 そして、それまでは「失敗しないため=嫌われないため」に戦っていたのが、「ゆいたちと一緒においしいスープを食べるため」という目的意思に変化する。成功か失敗かではなく、友達と自分自身の願いのために。

 ラストのシーンでは、ここねが皮むきに失敗したにんじんがスープの具材になって食卓に並べられる。失敗はあくまでも主観でしかないのだ。心情の変化を料理を使って演出したきれいなまとめである。

 なお、毎回料理という作品テーマをうまくストーリーと演出に落とし込んでいる本作だが、今回は「食べる」ではなく「作る」に焦点を当てている。

 分業と効率化の時代である現代社会では、食事の調理部分はめんどうな工程のひとつとして省かれがちだ。コンビニに行けば惣菜やレトルトなどが豊富に並んでいるし、最近はネットがあれば家から出ることなく出前を頼むことができる。

 そんな現代において本回は、「食感が気持ちいい」「ピーラーで皮を剥くのは楽しい」など、料理のもつ本質的な楽しさに立ち返りながら、「失敗は成功のもと」「自分らしさ」というメッセージ性を高い親和性で融和させた、デパプリらしい心温まるエピソードになっている。

 余談だが、今回はガンダムシリーズでお馴染みのカトキハジメ氏が絵コンテを担当している。戦闘でのスパイシーの見栄などはケレン味があり、その名の通り一味違う見ごたえのある回だ。


―以下個人的まとめ―

■ 構成
・巨視的役割:L

■ シーン分解
【アバン】
・O:ここねとお出掛けを企画

【Aパート】
・F:名前で呼ばれるもうまく返せない
・O:Pretty Holicへお出掛け
・G:名前呼びに成功

・F→L:人参の皮むきに失敗するが、受け入れられる
・E:レシピッピが捕まる

【Bパート】
・F→L→G:戦闘で空回りするが、心中を吐露してわだかまりを解消、勝利する
・L:ローズマリーと打ち解ける、失敗した人参が料理として出てくる


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