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【ストーリー雑感】デリシャスパーティ♡プリキュア 第3話「コメコメのおつかい!まいごで大騒動!!」

■ あらすじ
 コメコメのおつかいを軸に、メインキャラの人物描写を掘り下げる回。
 今回メインとなるのは「芙羽ここね」との出会いと、その人物描写。これまで秘されていた彼女のパーソナリティが、おつかいに巻き込まれるというイベントを通して少しずつ表出し始める。

■ スタッフ
脚本  :平林佐和子
絵コンテ:貝澤幸男
演出  :武藤公春

■ メインプロット
・メインキャラクター「芙羽ここね」「パムパム」の登場
・「芙羽ここね」のセットアップ

■ サブプロット
・コメコメのおつかい

 ■ 感想
 今回の脚本は一貫して、ここねというキャラクターの人物像を描くことに主眼を置いている。彼女はこれまで他のメインキャラと交流がなかったため、表面的な特徴から「感情を表に出さない、クールでミステリアスな人物」という印象を観客に与えていた。しかしそれは意図的なミスリードであった。
 彼女は「クールで感情表現の少ない人間」ではなく、「素直になれたり、感情を表に出せる場所に恵まれていないだけの年相応の女の子」であることが描かれている。
 そいういった内面的な部分を少しずつ明らかにすることで、ギャップによる印象操作から観客の感情移入へと誘導しているのがテクニカルだ。

 また、演出面で注目すべき点が2点ある。
 1つ目はここねの食事風景であり、庶民的だが温かみのある和実家の食事風景と対比的に描くことによって、彼女の置かれている家庭環境とその孤独性が浮き彫りになる形となっている。
 2つ目はプレシャスとここねの出会いのシーン。非日常的な出来事と立て続けに遭遇したここねだが、それらを経た上でのセリフが「私、早く帰らないと」であることから、彼女が家庭環境に端を発する何らかの事情によって、心身ともに強く縛られていることが示唆されている。
 またその後の跳躍のシーンでは、ここねがプレシャスの手によって、街という社会の象徴から、空という自由の象徴へと導かれる姿が描かれる。今後の展開を暗示するとともに、彼女の心的変化のきっかけとなりうる印象的なシーンだ。また、第1話から繰り返し描かれるゆいのヒーロー性・超然性がより強調される形となっている。


―以下個人的まとめ―


■ 構成
・巨視的役割:提示
→細分化:①目標a→②希望a→③失敗→④希望A→⑤悪→⑥善→⑦目標A→⑧提示→end

■ シーン分解
①目標a
・カレーの食材が足りないことに気付く
・母が多忙で父親も不在がちでありながら、健全な家庭環境であることが描かれる。このことは「⑧提示」におけるここねの家庭環境と繋がってくる

②希望a
・エナジー妖精のパムパムが合流。言語を操るなど、コメコメよりも心の発達段階が一段階上にある
・パムパムの心に、役に立ちたい・愛されたいという欲求が生まれる。自立性の芽生え
・食材の買い出しにひとりで向かう

③失敗、④希望A
・おつかいを完遂できないコメコメ
・ここね合流。動物相手に優しい言葉遣いなったり、表情が柔らかくなるなど、根の部分では心優しい人物であることが描かれる
・これまで感情を表に出さないミステリアスな人物描写であったが、少しずつ内面的な部分が明らかになる
・「クールで感情表現の少ない少女」なのではなく、素直になれたり感情を表に出せる場所に恵まれていないだけの、年相応の女の子であることが示唆されている

⑤悪、⑥善
・カレーのレシピッピが奪われる
・ここね、クッキングダムとブンドル団の抗争に巻き込まえる。ここより本格的に物語に参加し始める
・戦闘には負けたが、それはそれとしてカレーは買って帰るというジェントルー。真面目だが天然気味の憎めないキャラ
・カレーの上に卵が乗っている
・気絶していたここねが目覚める。開口一番のセリフが「早く帰らないと」である。抑圧と束縛
・街(社会)から空(自由)へ。未知との出会をきっかけに、心の開放と自由の獲得が暗示される

⑦目標A
・カレー作りに成功
・コメコメの成長
・家族の団欒

⑧提示
・ひとり静かに夕食を取るここね
・真っ直ぐに愛を与えられ成長するコメコメや、にぎやかで楽しい食卓を囲む和実家との対比により、その孤独がより際立っている
・厳格、抑圧、愛

■ 感情・心的変化
○主要人物:ここね(ポジ→ポジ→ネガ)
・妖精との出会い△
・プレシャスとの帰り道△
・孤独な日常へ▼

・全体としてはポジティブな印象だが、演出と次回へのセットアップも兼ね、ラストのシークエンスはネガティブな場面で終了し、余韻を残している。

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