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きみは「踊り場にスカートが鳴る」をもう読んだだろうか?

 本日の超絶・オススメ漫画・単行本発売情報と、その感想にまつわる一部始終です。

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 うたたね游氏の『踊り場にスカートが鳴る』です。自分は今百合姫を定期購読しているのですが、その購読理由のひとつがこの作品。
 作者のうたたね游さんといえば、空き家で昼寝する女の子の話を描いた短編読み切りがTwitterで話題になったことが記憶に新しい。作風こそ異なりますが、根底に揺蕩っている空気感にはどことなくルーツを感じ、こちらも大変感性に訴えかけてくる素晴らしい作品です。

スミカの棲家 - うたたね游

 閑話休題。本作は社交ダンスを題材にしたガール・ミーツ・ガール物なのですが、繊細な画風と丁寧な心情描写から織り成される空気感がとても良い…。構成や演出も白眉で、特に第1話は小道具の使い方やキャラクターのお芝居が本当に秀逸であり、本誌連載時から何度も読み返したくらい大好きです。本当によく練られた構成であることが伝わってくる。

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たい焼き越しの超巨大感情。

 内容の良さについては作者さん本人のTwitterで公開されている第1話をご覧いただければお分かりいただけるかと思うので、ここでは違うアプローチを。

 本作は単行本化されるにあたって連載時より大幅に加筆修正がなされていて、第1話に関しては全ページに渡って修正されていることからも熱量の高さが窺える。内容については、過去の画風を現在の絵に統一する修正が多いですが、演出意図がより強化されていたり解像度がグッと増すような加筆や、中には伏線のようにも見て取れる修正箇所もあったりなかったり…。そんな中でも特に象徴的だったシーンをひとつピックアップすると、連載時でも印象的だったこのシーン。

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左が連載時のカットで右が単行本。か、解釈~~~~つってバリデカい声出た。続きは自分の目で確かめてくれ!


 掲載誌こそ百合姫ではあるものの、作品としてのテーマその根幹にあるのは一貫して「自己肯定」・「自己実現」。主人公のききは、可愛いものが大好きで誰よりも少女然とした精神性を抱いているにも関わらず、その恵まれ過ぎた背丈から、自分の「好き」を諦めかけてしまいます。
 けれど、同じ境遇でありながら自分とは正反対の少女・みちるとの出会いが彼女を変えていく。自分の本当の願いを貫くということ、その楽しさと苦しさ。そして、ひとりでは諦めてしまっていたかもしれない願いも、同じ苦しみを持つふたりなら。
 自分のやりたいことと周囲からの要求とが乖離していると感じたことは、心当たりがある方も多いのではないでしょうか。そんな人たちにこそ、本作は強く、深く刺さると思います。

 無自覚な悪意に自尊心を傷つけられ「本当の好き」を諦めた少女と、それでも自分を貫き抗いつづける少女とが、手と手を取り合い戦う物語。イチオシです。あと、純粋に背の高い少女が背の低い少女にリードされるのが大好き侍にもオススメです。

 ちなみに、第1話が掲載されているのは2020年10月号。百合姫のバックナンバーはKindleで定期的にポイント還元セールを行っており、格安で購入できることも多いのでぜひチェックしてみてください。


 それでは。

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