プリチャン第100話「虹の鍵の門を越えて」
今回のプリチャンは100話という節目であると同時に、まさしくシーズン2の総決算と呼べる回だった。
シーズン2は終始二人のだいあの物語としてあり続けた。「そこにいるのにここにいない」というフレーズとともに鮮烈な登場を果たしただいあは、虹ノ咲だいあから生まれた、言わばイマジナリーフレンドと呼ばれる概念に端を発する存在だ。そこにAIとVTuberという現代的な概念をブレンドされた彼女は、当初虹ノ咲だいあの理想の具現として現れながらも、時に彼女に手を差し伸べる友人・保護者的な存在でもある、虚構と実在が入り混じった複雑な立ち位置の人物だった。
シーズン2の後半では、そんな一個のAIとして誕生した彼女が、「虹ノ咲だいあ」という少女の成長に寄り添い続ける中で自我が芽生え、自らのレゾンデートルについて思い悩み、そして自身と世界との関係性・立ち位置を見い出すまでの「生まれたばかりの幼子のようだった無垢なる存在が、ひとりの人間として心の理論を獲得するまでの過程」を、ただただ真摯に描ききった。
また前述の「そこにいるのにここにいない」というフレーズは、まさに目まぐるしく移りゆくシーズン2のテーマの変遷を見事に象徴していた。
虚像としての存在であること。虹ノ咲だいあのアバターとしての側面を持つこと。そして、物語終盤の「自分は世界から必要とされていないのではないか」という自己否定感から来るレゾンデートルの喪失。
その一文に内包された複雑怪奇な多重のミーニングは、まさに「バーチャルプリチャンアイドル・だいあ」を体現するフレーズとしてこれ以上に相応しいものはなかった。
第100話では、黒化しただいあが生み出した心の壁によって、キラ宿中のプリチャンがその機能を停止してしまう。プリチャンを介してメッセージを伝えることができなくなった虹ノ咲だいあは、ダイヤモンドコーデの力を借りたみらいと共に直接だいあの説得へと向かう。
ダイヤモンドコーデは本来、虹ノ咲だいあが自身と友だちになってもらうための対価として用意した贈り物だ。しかし、もう彼女たちの間に横たわっているのはオーディションをする側、される側といった利害関係ではない。困っている友人を救うという純粋な願いを叶えるために、ダイヤモンドコーデを纏ったみらいはジュエルチャンスを引き起こす。
中身こそ虹ノ咲さんであるとはいえ、「これまでエスコートしてきたアイドルにエスコートされるだいあ」という図式は感慨深いものがある。しかもこれまでとは違い、友人として共に「プリチャンアイドルを導く存在」を救済するため、彼女は導かれるのだ。
そしてだいあへのメッセージを「ライブ」という形で表現するのが、まさしく本作が本作たる所以である。
歌も踊りも、太古の世界では呪術的な儀式としての側面を持つこともあった、極めて原始的な力を持つ非言語の表現手法だ。結局のところコミュニケーションにおいて、言語やSNSという媒体は本質ではなく、あくまで他者と繋がるための一手段であり、架け橋に過ぎない。大切なのは、橋を渡った向こうにある心と心が繋がること。それこそが友人であり絆であること。そして、自分たちはもう"繋がっている"のだということ────。プリチャンが機能を停止した世界の中心で、ふたりはそのメッセージを切々と訴えかけるのだ。
「ハートとハートで結ばれたら 本当の友だちになったと思っていいの?」と、扉の中で不安がっていたお姫様はもういない。贈り物のドレスもパスワードも、もう必要ない。なぜなら、絆とは無償の愛であるということを彼女は知ったのだから。
誰も不幸になることのない優しい世界を最後まで貫き通し、まさに大団円と呼ぶに相応しい幕切れでした。
プリチャン最高〜!
MEMORIES FOR FUTURE
真っ暗がつつむ中 ふたりで囁きあった 夢の(夢の)続きを今
泣き虫なお姫様 ざわめく窓の外が 怖い(おいで)顔上げたら
どんな悲しみも一緒に越えられる 君と
だから(行こう) 夜の(向こう) 新しい世界へ
生きてる証だから とびきり泣いていいよ
でもね 隣で 手を繋ぎたい 伝え続ける大好き
ハートも私たちも いつだってくっつき合える
心配いらない パスワードもいらない 友だちだからね
生きてる証だから とびきり泣いていいよ
手を取り合ったら もう絆だね 変わることない大好き
ハートも私たちも いつだってくっつき合える
心配いらない パスワードもいらない 友だちだもんね ずっと
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