【ストーリー雑感】デリシャスパーティ♡プリキュア 第4話「ふくらむ、この想い…キュアスパイシー誕生!」
■ あらすじ
二人目のプリキュア・キュアスパイシー参戦回。第3話に引き続き、ここねの人物描写を掘り下げつつ、ゆいとの関わりによって生じた彼女の心理変化と、プリキュアになるまでの決意を描いている。
■ スタッフ
脚本 :平林佐和子
絵コンテ:小松由依
演出
■ メインプロット
・ここねとゆいの交流
・ここねがプリキュアに変身
■ ストーリーライン
・パムパムがここねへお礼したいと言い出す
・逃げ出したウサギの捕獲
・カフェでの交流
・ここねの戦闘への介入
■ 感想
前回と併せて実質的な前後編となっている。シリーズの中でもストーリー進行のテンポが比較的ゆっくりで、メインキャラがプリキュアになるまでの過程をかなり丁寧に描いている印象を受ける。今回はここねの置かれている境遇と、どこか諦観気味にあった彼女の人生観が変化するまでの一部始終が描かれている。
Aパート冒頭、彼女は恵まれた家庭環境と優れた容姿・才能のために周囲から奇異の視線に晒され、良くも悪くも特別扱いされ、距離を置かれていることが明かされる。そんな彼女自身も、「ひとりが楽だった」「静かな一人の時間が好き」「人と関わるのは面倒だし、疲れるから」と語ったように、自ら望んで孤立を選んでいた。しかし、色眼鏡を抜きにしたゆいの純粋な気持ちによって、彼女の心に変化が訪れる。
今回の話を読み解くキーワードのひとつに「シェア」がある。これは、他人と美味しい食べ物を分け合うことの実利的な喜びに留まらず、「同じ価値観を持つ心を許せる相手と時間を共有すること」「価値観や内に秘めた心の世界を共有すること」の根源的な歓びをも意味している。
他人に自分を理解してもらえることは嬉しい。だから自分も相手を理解してあげたい。互いが歩み寄ることにより生まれる和集合、それがシェアの本質である。そしてそのことが、レシピッピが視えるという視覚的特徴によって表現されている。余談だが、そういった演出を思春期のみに知覚できる幻想めいた存在に仮託にするのは美しいと思う。
そんな彼女に芽生えた新たな感情が心の中でどんどん膨らんでいき、頂点に達した場面で満を持しての変身となる。これ以上ないほどに用意された舞台だ。なお、なぜ変身名が「スパイシー」であるかの理由は、プレシャス同様、現時点では推測の域を出ない。
ラストのシークエンスでは、これまでは「巻き込まれ型」の受動的な関わりが主であったここねが能動的に歩み寄り、自分から分け与える側に回る姿で締められる。これは前回ラストとの対比であり、アンサーともなっていると受け取れる。
総じて、ここねの心の動きを丁寧に追いかけることで、シナリオの強度とキャラクターの魅力を高い次元で両立した完成度の高いストーリーだった。
―以下個人的まとめ―
■ 構成
・巨視的役割:L
→細分化:L-EFG-L-EG-L
■ シーン分解
【アバン】
P:ここねの家庭環境と前話のその後、レシピッピが視える描写
【Aパート】
P:ゆい達の進級と新学期の始まり。3人が同じクラスであるが、まだ他人である、ここねが学校で孤立している
L1:パムパムがここねに会いたがる
E-F-G:脱走したうさぎを助けようとするがひとりではうまく行かない、ゆいの協力によって助けられる
L1:パムパムとここねの面会が叶う
L:分け合うことの喜びを知る。分け合うとは、協力し合うということや、価値観、自分の世界を共有すること
E:レシピッピが奪われる
【Bパート】
G:ここね、戦闘に巻き込まれる。離脱しようとするも、自らの意思で戦闘に参加することを決意。レシピッピを取り戻す
L:感謝を伝え、自分から分け与える。前話ラストへのアンサーにもなっている。スパイシー加入編の前後編が完結し、次回へ。
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