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「きたない君がいちばんかわいい」が最強の百合マンガであるという話

 今個人的に最もハマっている「きたない君がいちばんかわいい」というマンガの話です。

 同作品は、まにお氏による「百合姫」の連載作品で、個人的には百合の垣根を越えて「令和イチ面白いマンガ出てきたな…」と思っています。最新第3巻も12/18に発売し、その表紙があまりにも最高過ぎることが最近大きく話題になりました(ぼくの中で)。少なくともこの表紙が琴線に触れた方は、概ね想像通りの物が出てきますので迷わずBUYでOKです。このマンガはあなたの欲求を満たしてくれるものであり、もれなくQOLが上昇することが保証されています。

帯のセンスも秀逸すぎて見た瞬間絶叫した。

 上のイラストだけ見ると「この黒髪ロングの女の子がひどい目に遭う作品なのかな?」と思いがちなんですが現実はちょっと違って、まあ実際その通りの展開に向かって行くんですけど、そこに行き着くまでの過程の描き方が凄まじく良い…。以下あらすじ。

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瀬崎愛吏(あいり)と花邑ひなこ。クラスではグループもカーストも違い接点のない二人だが、彼女たちには人には言えない秘密があった。それは、愛と打算と性癖に満ち溢れた少女たちの秘め事……

 「カースト上位と下位に属する正反対な身分の二人が、周囲に関係がバレないよう密会を交わして…」というのは物語としてはありがちな設定なんですが、このマンガでは二人を結びつけているものがかなり歪んでおり、友愛でも何でもなく性癖。しかも一方的な。
 左の黒髪ロングの女の子=「あいちゃん」が、右のショートボブの女の子=「ひな」をメチャクチャにすることで歪んだ欲求を満たすという、言わば『僕の心のヤバイやつ』の本当にヤバいやつバージョンですね。放課後に周囲の目を忍んで密会するところまでは同じですが、こっちは相手にゲロ吐かせたり赤ちゃんプレイしたりするなどをします。百合だからこそ一般紙で成立する内容。山田と市川がやったら一発でオワりですね。

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ひなよりも優位に立つことで充足感を得るあいちゃん。優等生で顔面も最強クラスだがムーブが畜生のそれで、ひなの臍に無理やりピアス開けたり窓から突き落とそうとして無理やり失禁させるなどする。

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ぼくのお気に入りのシーンの「ひなが無理やり昆虫を食べさせられて何とか飲み下したものの、ビンに仰山入っている原形を見てしまって耐えられずに結局吐いちゃうシーン」です。吐瀉物に虫の残骸が混じってるところが最高!

 と、上記ように1巻の時点では、あいちゃんがひたすらひなに欲望を叩きつけるだけの「ちょっとニッチな性癖マンガ」といった趣なんですが、2巻から登場人物それぞれの関係性が入り混じって話が動き始めると、物語が思いがけない方向へ動き始め…。そこからが衝撃的に面白い。個人的には「箱庭だと思っていたらオープンワールドだった」的な感覚を覚えました。

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 上の画像のようにあいちゃんはひたすら利己的な人間。あくまで可愛いのは自分であって、そのためにひなを利用しているに過ぎず、一番大事なのは自分自身。当然カースト下位のひなとの接点がバレてしまうと面白くないので、対外的には全くの他人のフリを装っています。
 そんな二人が、2巻のラストでは関係を知った第三者の告発によってその常軌を逸した関係性が周囲にバレてしまう。バレてしまうわけなんですけれど、そのバレるまでの過程と描き方が凄まじくカタルシスに満ちている。明け透けに言うと、これまで絶対的に強者だったあいちゃんが全てを失って何もかもが壊れてしまうその瞬間の描写が圧倒的に”良い”…。

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ツラのいい女子の人生がメチャメチャになっていく様、マジでアゲリシャスって感じです。

 ぶっちゃけこのマンガを興味本位で手に取る層ってそれなりに「そういう性癖」がある方だと思うんですが、これまでひなこが一手に担っていた役割が反転するその瞬間がマジで最高なんです。そして物語はそこに留まらず、ひなこ自身の心境にも変化が…というのが3巻でメインとなる内容。
 きたかわ、掛け値なしに今が一番面白いところなので、未読の方はこの機会に是非とも一読してほしい。
 ちなみに本作の英題ですが、1巻時点では「I Love Your Cruddy...」なんですが、2巻では「I LOVE YOUR CLOUDY...」に。"きたない"の意味するもの、そして"きたない君"とは誰が誰を指す言葉なのか。これらを踏まえた上で、ぜひ3巻まで一気に読み進めてほしい。

 ちなみにヘッダーにも使ってる下の画像は2巻のメロンブックスさんでの購入特典のブロマイドなんですが、百合漫画の特典とは思えない内容のガチさに震えます。

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 また若干のネタバレになってしまうんですが、3巻で一番印象的なセリフが「わたしのせいじゃないのに」というもので、単なる責任転嫁ではなく本質を突いているなと。例えば、飢えたライオンの目の前にボロボロのウサギがいたらどうなるか? 食べ物の好き嫌いでいうと、カレーライスが好きなのが善でガパオライスが好きなのが悪なのか? というような話で、人の持って生まれた根源的な欲望はどうしようもないもの。そういう意味では愛吏の気持ちは実のところ非常に人間らしくて共感できてしまうんですよね。その場合、目の前に現れたウサギがウサギの皮を被った悪魔だった場合は…。ここまで来るとある種ファムファタール的ですね。

 さて、どう足掻いても最低最悪のメリーバッドエンドを迎えることが予想される本作ですが、果たしてどのような結末に着地するのか。目が離せねえ~~~~~~。

 オワリ。

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