指でなぞる言葉。

ある町に、言ってもらいたいひとからの言ってもらいたい言葉を、言ってくれる喫茶店があった。その言葉は、紅茶のお皿に、リスの包装紙に包まれて添えられていた。訪れるひとたちはその言葉さえあれば生きてゆけた。安らかに眠れた。人々は繰り返し喫茶店に通い、繰り返し同じ言葉を指でなぞった。

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