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短いおはなし6

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2017年11月の記事一覧

簡単に救ってもらったら、きみはきっとなにかをとりこぼす。



ぼくはいつか救われる?子ぐまが聞いた。クマが答えた。上手くいってない時の方が、自分のいびつさに気づく。ひとの悲しみやあたたかさに気づく。救われなさが、きみをつくる。誰かに簡単に救ってもらったらきみはきっとなにかをとりこぼす。いまは、苦味のある慈愛に満ちた人生の料理の途中。

尾道 紙片さんから5度目の追加オーダー。

尾道 紙片さんから5度目の追加オーダー。

私の最後の余白、尾道 紙片さんから5度目の追加オーダーをいただいた。納品、準備させていただきます。現実はすごい。昨日のこともあわい約束もはるか過去のよう。子ぐまが聞いた。今日はなんのためにあるの?クマが答えた。新しい本と新しいうたをつくるためさ。
※お写真お借りしました。

ねこはなにを見ているの?



ねこはなにを見ているの?子ぐまが聞いた。クマが答えた。きみの冷たさと勝手さだよ。子ぐまが言った。ぼくはぼくの冷たさと勝手さが好きじゃないんだけどしかたないんだ。クマが言った。それはねこも知っている。知っていて、何も言わずにきみのそばにいるのさ。

MOUNT ZINEさま、完売。



‪MOUNT ZINE様よりMZ14用納品分、完売のご連絡いただきました。ご用意いたします。MZ13から合わせて4度目納品になります。うれしいです。‬

会えないときはどうしてるの?

会えないときはどうしてるの?



会えないときはどうしてるの?子ぐまが聞いた。クマが答えた。想ってるよ。そしてやるべきことをやる。偉くなんかないよ。すこしでもまともになりたいだけ。出会ったということを大事にしたいだけ。出会ったということを穢したくないだけだよ。

おれは誠実に厳しくおれを大事にしよう。



薄暗い冬の駅で大きな広告を見ながら、キツネは意味もなく思った。おれはもう愛想笑いもこびるのも誰かのせいにするのも、誰かにこだわりすぎるのもやめてしまおう。おれは誠実に厳しくおれを大事にしよう。そしてそういうおれを見つける誰かとだけ誠実に出会いを深めよう。

花を持って電車に乗る。



クマは、花を持って電車に乗るのが好きだった。クマはどんな運命だろうと花を持って電車に乗るだろうと思った。届けるのは好きなひとでもいいし、自分でもいい。電車は人生のように行き先不明だったが、クマは花といれば静かな気持ちでいられた。

手の甲にすこし雪が降る。

手の甲にすこし雪が降る。

キツネはクマのうたを聞きに行った。以前キツネが聞いた。きみのうたはどんなうた?クマが答えた。手の甲にすこし雪が降る。うたがはじまるとうたの中は吹雪だった。キツネはいつの間にかランタンを下げて吹雪を進んでいた。ライブがおわるとキツネは会場の外に出て身体にふりかかった雪をはらった。

草舟あんとす号さんに再納品。



わたしの身体の一部、草舟あんとす号さまに、再納品させていただきました。とんでもなく素敵なお花屋さん、お菓子屋さん、と並んだ植物の本屋さんです。欲しい本たくさん。ぜひお出かけくださいませ。

たぶんどこかの海の近くのカフェで。

たぶんどこかの海の近くのカフェで。



サンフランシスコか、ストックホルムか、湘南か。たぶんどこかの海の近くのカフェ。もう若くない男が眠たくなるうたをうたう。女主人は、もうちょっとお客さん呼んでくれると助かるんだけど、と思ってる。よく晴れた冬の午後、数少ない常連さんがレモンドーナツを食べながらうたを聞いてうとうとする。

クリスマスのギフトに。

クリスマスのギフトに。



‪この本は手づくりで希少だから、クリスマスのギフト向き。本屋さん、CD屋さん、雑貨屋さん、いろんなお店をぐるぐるまわっても、ひとつも欲しいものが無かった、そういうひともいると思います。私もそうでした。だからこの本をつくりました。そんなあなたからあなたへ贈ってもらうためにつくりました。‬

誰も、何も、あなたのものではない。


#魔女の帰郷 「人間は、失って悲しいって言う。だけど誰も何も、あなたのものではない。悲しいのは、あなたが自分のものって思い違いしてただけ。いのちは身勝手で運命は唐突。だからこそ不安になるから約束をしたがる。約束して安心した?でもね、いのちは運命の波間をしぶきをあげて進んでゆくわ。」

冬のマフラー

冬のマフラー

‪男の子は、ずいぶん前にたった一度、大切なひとが言ってくれた言葉を大切にした。すべてのひとにきみは間違いだと言われても大切にした。また厳しい冬が来た。でも、言葉が仕立ての良いマフラーのように男の子の首元をあたためた。男の子はその言葉に顔をうずめ黙って生きた。‬

おりかさなる面影。

おりかさなる面影。

クマは以前、とても激しい嵐で大事な庭を失った。クマは、失ったとは思わなかった。あんなに美しい花と出会えて幸せだ、と思った。クマは出会えた美しい花の面影を大切にして、また庭をつくりはじめた。クマの庭には、クマの生涯には、いくつかの美しい面影がおりかさなり、やさしくそよいでいた。