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生活の光

わたしは生活が好きだ。

朝、白い光に包まれた部屋の中で目が覚める。大きな窓にかかったつやつやのカーテンや、柔らかい布団や、ベッドシーツや枕カバーは全部真っ白で、それらはみんな静かに朝日を反射している。

いつでも部屋の窓を開けるのが好きで、朝一番もどんな季節でも、起きるとまずベッドサイドの窓を全開にする。わたしはアラームを掛けずとも毎日早朝に覚醒してしまう。だから、窓から見える景色はいつもしんとしていて、まだ街は眠っているみたいだ。

寝ぼけたまま朝の、少しきれいな感じのする空気を肺いっぱいに吸い込んで、ぐっと伸びをして、ベッドの上から部屋を見渡す。そうすると、自分が自分で作った大好きなお城の中にいることがわかる。深い色の木とアイアンの大きなデスク、イケアで買った軽くて黒い椅子、そのスペースには活けた花やお気に入りの雑貨、好きな本や詩なんかが並んでいて、毎日目に入るだけで嬉しくなってしまう。姿見はずっと小さい頃から使っていたもので、それを置くための木の椅子は中学生の時に学校の授業で作成したものだった。このふたつは家を転々としても、ずっと部屋に置いている。

顔を洗って着替えて、コーヒーを淹れにキッチンに立つ。洗面台やキッチンも大好きだ。きちんと清潔で、それなりに生活感があって、自分の気に入った生活道具しか置いていない。

コーヒーを淹れる時間は、なんて豊かなんだろうと思う。豆を選んで、挽いて、お湯を沸かし、ドリップし、その一杯が完成した時、これを毎日やっていてもちょっぴり感動してしまう。淹れ方に強いこだわりがある訳でもなく、丁寧に計量する訳でもなく、思いきり自己流だ。それでも、自分の手で淹れたこの一杯が世界でいちばん美味しいのだと思う。

コーヒーを飲むと、ちゃんと味がする。
朝に起きられたこと、部屋や身体の清潔を保っていられること、自分の意思で動く身体、コーヒーを通すことができる喉、美味しいと感じられる自分の内側が、ちゃんとある。そういうことに気付いた瞬間、「ああ、今日も生きているなあ」と、本当に、切実に、実感する。


わたしは生活が好きだ。

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