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鑑定・査定人工知能”MEKIKI”を開発しているいくつかの理由①

2019年12月2日に1年半の開発期間を経て、鑑定士サポートアプリ「MEKIKI」をローンチしました。私自身リユース業界で20年以上鑑定士をしています。自身の体験の中で感じた「いま、リユース業界・鑑定士に必要なことは何か?」の想いがこの人工知能MEKIKIには詰まっています。単にAIによる鑑定・査定を実現したいという思いだけではない理由を書いてみたいと思います。

決定的に欠けていたこと

2016年のある日、某時計店(地元では有名なお店)からの依頼で顧客からのダイヤモンドの鑑定・査定を依頼されました。3つのダイヤモンドで、事前に聞いたグレードでは私たちの買取価格で「800万円から1,000万円」の可能性のあるダイヤモンドでした。

当日、1人の新人スタッフを連れて某時計店にお伺いをし、個室でお客様とダイヤモンドを前に鑑定・査定を行いました。先ずは「本当にダイヤモンドなのか?」を丁寧に鑑定し、そして付属していた鑑定書のグレードと私が見るダイヤモンドのグレードに大きな差がないかを鑑定します。そして、業界の中で活用されるダイヤモンド取引相場を参考に査定をしていきます。この一連の作業を私たちは「目利き」と呼んでいます。

鑑定・査定にかかった時間はダイヤモンド3点で20分程度でした。そこから査定金額を提示し、若干の交渉があり、30分程度で金額確定にたどり着きました。私自身、高額の買取でしたのでテンションも上がり、連れて行った新人スタッフに意気揚々と「目利きとは?」「プロフェッショナルとは?」について語っていたように思います。

店舗への帰り道、目の前に同業ライバル店が見えてきました。私は社員研修の意味も込めて「このダイヤモンド3点持って、鑑定・査定してもらっておいで」と新人スタッフをその店舗へいかせてみることにしました(ライバル店のみなさん、申し訳ございません!)1時間半後、お店に帰ってきた新人スタッフの言葉を聞いて、絶句し、眼から鱗が落ちまくりました。自分の査定金額に自信満々で「どちらの店に売りたい?」と聞いた私に


「社長、申し訳ないですけど僕はあちらのお店で売ります。」


え?どゆこと?まじで?


整理しておきます。以下、リアルな数字。


スクリーンショット 2020-02-05 10.20.25


その時は負ける要素が全く見当たりませんでした。そもそも金額でも勝ってるし。そこから彼の詳しい体験談を聞いている中で、確実に見えるレベルで眼から鱗が落ちまくり、私の中での「鑑定士における唯一無二の方程式」があっさりと「それは考え方の一つに過ぎない」という認識までたどり着きました。眼の中に入っている鱗が邪魔をして、バガボンド的表現では

「広い天下を、狭くした」@無二斎


「私(恐らく多くのリユース業で働く鑑定士)には、お客様に対する接客接遇が圧倒的に欠けている」


という事実に気付かせてもらいました。これは決して目の前のお客様を蔑ろにしているということではなく、私たち鑑定士は真剣に「モノ」を見ているということです。「モノ」を目利きすることを「刀」と捉え、鑑定力を磨いてきました。私の中での「鑑定士における唯一無二の方程式」とは「モノを目利きし、出来るだけ短い時間で、最高の金額をお客様に提示すること」でした。そのように考え、そのように社員教育をし、徹底的に目利き力を磨いてきました。


その思いに囚われるあまり「モノをみることに集中して」、「目の前にいるお客様が見えていなかった」という決定的に欠けている事実に気づくことができました。


新人スタッフが行ったライバル店は「モノよりも人」にフォーカスし、対話の中からお客様の緊張をほぐし、鑑定・査定に関してはオンラインを活用している。そして目の前のお客様への接客接遇に全力を尽くしている。まさにサービス業のあるべき姿である、という視点で捉えると、私を含めたくさんの鑑定士は


「査定という作業をお客様に無言の空間の中で見せているに過ぎない」


と、捉えることができます。「顧客体験」を中心において「リユース体験」を再構築していく必要性を強く感じました。勿論、鑑定力・査定力つまり「目利き」であることは私にとっては必須です。それが変わることはありません。ただ、それに集中するあまり「目の前のお客様が見えていない」ということはあってはならないことだと痛感しました。

この体験が後に「テクノロジーによって補完出来る部分は補完し、丁寧に接遇の時間を作る」という「MEKIKI開発」に到る原体験となりました。


「テクノロジーで補完される部分」によって生まれる時間を有効活用し、顧客体験を変えていくこと。これが私たちが「MEKIKI」を開発しているいくつかの理由の1つです。続きはまた次回。



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