胸骨正中切開 術後の生活

手術直後から退院まで

1~2日目
ほとんど何もできない。だるい。息を吸うと胸が痛い。たまに吐き気が顔を出すが、この状況で吐く=呼吸を激しくするのはどう考えてもものすごく痛いので、気づかなかったふりをしてやり過ごす。少しでも活動量が上がると(咳、体勢変更など)痛みが増して呼吸が浅くなり、それでさらに息を吸ってさらに痛い。。のループに陥る。

食べないと点滴が取れないと言われ気合で食べるが、だるすぎてお茶碗を十分に持ち上げられず、結果お椀を倒してスープをこぼしてしまう。諦めてお茶碗をトレーに置いたまま箸でつついていたら看護師さんに注意される(涙)

ベッドに角度をつけると痛みがラクになることに気づき、以降は24時間角度つきで過ごすようになる。

3日目
チューブが取れる。病棟をゆっくり一周歩けるようになる。シャワーを浴びる。
・iPhoneを持って充電ケーブルを挿す動作が痛くてできない(ベッドを使い、iPhoneを逆さに立てて片手で支え、もう片方の手でそこにケーブルを挿す方法で解決)
・上を向ききれず、ガラガラするほうのうがいができない
・シャワーは気合と執念。あがって一休みしてから病棟を少し歩いてドライヤーをかけにいく
・体を洗ったりフェイスケアをしたりすることができない間はずっと惨めで仕方なかった。尊厳というものを理解する

4-6日目
・iPhoneを持って充電ケーブルを挿せるようになる。筋肉の回復を実感する
・6日目にようやく、ささやかなガラガラができるぐらいまで上を向けるようになった

7日目
・退院

術後にリュックを持てなくなる都合上、入院時の荷物はスーツケースにまとめるのが望ましいです。私の場合、それは承知していたのですがどうしても社用PCを持参したい理由があり、退院時に介助を得られる前提でリュックも持ち込みました。

退院後の生活

日常生活で困ること、痛いことを思いつくままに書き連ねていきます。どれも一過性のものでしょうが、入院前の準備の参考にしていただければ幸いです。

困ること
・疲れる:リモートワークなので退院翌日から仕事に復帰したのですが、やはりというか、すぐバテました。復帰後1週間ほどは1~2時間ごとに10-15分の休憩を挟みながら作業し、2週目は昼休みと終業後に休憩するようにしました。理解のある職場で助かりました

・喋ると体力を消耗する。ゆえにミーティングがきつい:喋る量は議題や参加人数にも影響されるので一概には言えませんが、1:1のミーティングの場合、復帰直後は15分ぐらいで疲れを感じました。ミーティングが連続するようなスケジュールがあれば体力に応じて調整できるとよいです

・寝転ぶのが大変:座椅子のほうがラクなので基本的にそっちを使いますが、夜寝るときやどうしても横になりたいときには、ベッドに横向きに座り、首を伸ばさないようにうつむいたまま横寝の体勢まで体を横向きに倒します。理学療法士さんに教えてもらいました。枕が高めだとちょっとラク。着地できたら、一休みしてから仰向けになって体勢を整えます

・気軽にもたれられない:座椅子がラクと書きましたが、座椅子であっても、もたれるまでは良いのですが、そこから上体を起こして戻すときに痛みを感じます。また、最初のうちは首の力で頭を起こすのに痛みがあったので、首をもたせかけて休めるのにはちょっとした覚悟が必要でした

・ジャンプ傘が閉じられない:しょうもないですが。退院日が雨でした。。母がいてくれてよかった

痛いこと
・笑う
・咳をする
・くしゃみをする
・あくびをする
・重いドアを引いて開ける
・シャンプーやハンドソープなどのポンプを押し下げる
・ゴミ袋の口を縛る
・体勢を変える
・胸を開いたり腕を上に伸ばしたりする操作全般

生活を送るうえでどうしようもないことも多いのですが、くしゃみやあくびはなるべく殺し、ハンドソープはオートタイプのディスペンサーに買い替えています。ゴミ袋の口を縛るときの痛みは術後25日ぐらいでなくなりました。

体勢変更は、主に寝転んだ状態からベッドに座ったあと、逆にベッドに座ってから寝転んだあと、もたれて座っている状態から背中を起こしたあとに痛みを感じます。立ち上がるのはあまり痛くない。

また、私は夜になると痛みが増すようなので、いまも夜だけ痛み止めを飲んでいます。痛み止めを飲んでも痛いときは痛いので、体力を使うシャワーや食事はなるべく早めに済ませています。

事前に調べた考慮事項のふりかえり

この記事に書いた、胸骨を守るための3つの項目です。

・5kg以上のものを持つな
・運転禁止
・リュック禁止

それぞれについての、現時点での感想です。

「5kg以上のものを持つな」
5kg未満でも痛いときは痛いし、5kg以上でもものによっては持てるような気がしています。たとえば2kgのペットをケージから出すときに胸に痛みを感じますが、4.6kgの箱を両手で持つのはあまり痛くありませんでした。「位置エネルギー、運動エネルギー。。」とか古い記憶を掘り起こしつつ暮らしています(理解はしていない)。

「運転禁止」
これ、私の主治医は「別にいっすよ」という意見でした。自主性尊重。痛みや不安があり、それによって一ドライバーとして責任を持てる行動をとれないうちはやめておいたほうがいい。というシンプルな話を大衆向けの一般論として広げたらああなったのかなと、いまでは思っています。

「リュック禁止」
いまの繊細な胸骨では試してないし、試したくもないです。主治医に聞いてみたところ「前で持てばいいんじゃない?」との回答をいただきました。た、たしかに。。

そんなところでしょうか。私は、言ってしまえば「ただの」縦隔腫瘍の切除だったのですが、同じ術式で肺や心臓などの臓器の手術を行った方は、それらの後遺症がこれに加えて発生してくるのかなと思います。どうかお大事になさってください。

以上、これから手術を受ける人、手術を検討している人の参考になりましたら幸いです。

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