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有宮明哉の書籍レビュー『夜行観覧車』

三冊目の書籍レビューになります。

ここから下はネタバレになりますので、お気をつけください。
















今回のストーリーはイヤミスじゃないなってXでは書いたけど、のちのちに考えてみると告白よりかはイヤミスな感じがしてきた。
もともと、イヤミスって読んだ後に嫌な感じになるミステリーってことだから、今回のは人に内容を説明してた時に、あれ?これは後味悪すぎん?ってなったから、これはイヤミスですな。
最初にイヤミスじゃないって言ったときに思ったのは、話がすごくまとまりよく、最終的には全てのわだかまりが解けて、いびつだった家族がいびつなままでもなんとか進んでいくという形が見えたので、いい話やんって思ったんだよね。
それでいて、近くのおばあさんとかも嫌な町内会のおばあさんやなとしか思っていなかったけど、あの人がいなければ助からない人が多数いたりと(命的にも、心的にも)、なかなかに出てくる人出てくる人が救われる話だなーと思ったからこそイヤミスじゃないって思ったんだよね。
たださ、これ救われていないの二人いるよね。
感じ方によっては二人以上いるかもだけど、、
一番の被害者、高橋家の父親。
死んでしまったばかりでなく、すべての罪をこの父親になすりつける。
死人に口なしとは本当によくできた言葉だ。
今回の殺人事件の真相は母親による色々と積み重なった怒りによるものだが、母親を追い詰めたであろう、高橋家の長男と次男の二人からも母親の罪を少なくするために父親にすべてを擦り付けるということを行った。
長女は父親に対する批判がでたときにひどく怒ったため、上記のことは本当は認めていないと思われる。
そのため父親のせいでこの事件が起きたように見える。真相を知る人達からは何言ってんだ?ってなるけれど、実際知らない人からみたら同情される結果となるだろう。
実際の事件でもこういうことって起こりうるんだろうなって思ってしまうほどリアルな事件の書き方だった。週刊誌とかは好き勝手書いていることも多いだろうし、テレビだって同じく微妙な情報を好き勝手報道することもある。
こういう部分に着目するのが本当に湊かなえさんはすごいと思う。

そして二番目の救われていない人は、高橋家の母親。
顔が良いことが取柄の母親だ。ただし知能は並程度。
前妻との間にできた長男は顔は普通だが、頭は父親に似て出来がよく、医学部に進学することになる。
そして自分が産んだ子の長女はともかく、次男が顔はいいものの、頭は中の上程度。
長男と次男の頭の差に悩み、自分が責められているような気がして、毎日頭がおかしくなるほどに狂ってきてしまう。
最終的には次男を追い詰め、そのことで次男が暴れたところに父親が登場。
些細な口論の中に、次男を頭の良い道はあきらめたような発言に(おそらくここで自分が強く責められているように感じたと思われる。文中にはその表現はない。他者から見たら些細な口論であり、殺すような会話ではなかったとのこと)、プツンと来てしまい父親を殴り殺してしまう。
そして、子供に被害が及ばないよう外に逃がして、警察と救急車を呼び、自ら自首を行う。
この時の心情としては、ことの大きさを把握しきれずに自分がやってしまったことを子供に見られないよう、隠したまま捕まりたかったのかなと。
ただ、きっと心神喪失状態にもなると思うし、確実に心は死んでしまった状態にもなるのかなと思う。
なのに、自分自身の心を追い詰めた子供二人に助けられ、刑務所から早めにでてきたとしても、確実に子供を愛することはできないよね。
それどころか発狂して死んでしまうのではないかと。
んー、ここまで書いていると高橋家はすべて救われないなと。
きっとあういう感動のショーを週刊誌等で報道してもらったことにより、高橋家の子供たちは救われる可能性はある。
殺人鬼の親の子ではなく、同情の目で見られることもあり、どちらかというと正義の殺人を行った子供ともみられる可能性もあるだろう。
ただ母親の心は救われない。
自分の癇癪によって夫を殺してしまったのだから、追い詰めたのは子供の存在かもしれないけれど、子供は追い詰めようとしての行動はしていない。勝手に母親が追い詰められただけ。
その中で、出てきたとしても居場所をどこに置いたらいいのかわからなくて自分なら死んでしまうかもしれないと思った。
そしたら子供たちはやはり不幸になるし、それでいいと思えないよね。
両親が死んだ原因がどちらも自分たちのせいとなるんだから。

確実にフラッシュバックする。

って考えているとイヤミスだなあああと今になって思う。
すごくもやもやもやもやさせてくるやん。

最初の感想はね、家族関係の問題をそれぞれ一人ひとりの視点をよく描いていて、こういうところが嫌だとか、こういうところが良いとか、よく色々な人の感情をここまでかけるなぁ。そのうえで家庭事情がリアルすぎて、どこかでありそうな話を、ここまで泥臭く、醜く、心にくるようにかけるなと。
遠藤家の父親もうだつの上がらない父親みたいな状態で、母親も見栄をはるような人。子供は受験失敗して、人生の絶望みたいな状態でまだまだ成長しきれていない未熟な子供という部分をよくかけていて、本当にリアルな家庭事情だなと。
最終的には母親が子供を殺しかけてしまい、そこを嫌味なおばあさんが助けるという、助ける人そこーーーー!!??
ってツッコミたくなるような展開で、父親は最低な父親やんっていうところから、高橋家を救うような立ち位置になるし、ご都合主義かよー的な雰囲気に見せていながらも、いびつな状態なまま家族がもう一度家族に戻るシーンとかも少し感動するし、良かったねぇえって感じで終わったのよ。
おばあさんのマー君への言葉も全然嫌な感じもせずに、見れたんだけど、今になって思えば、高橋家つらっ!って思ってきた。
遠藤家もそこまでいい状況ではないにしろ、乗り越えられると思うし、おばあさんも問題はない。
もちろん殺人とかこういうことが起こる前に色々止めることができればって思うけれど、そんなことは奇跡でも起こらない限り無いんだよね。
声を上げることで何とか遠藤家は助かったけれど、声を上げないと助からないというのが高橋家。
リアルでも想像できそうな事件として、状況として書ける文才というのが、湊かなえさんをここまで売れっ子にした部分なのだろうともう一度確信。

自分もミステリーを早く書きたい。
湊かなえさんに読んでもらえる文章を書きたいと思う。
必ず応募できるように間に合わせて見せると強く思わせてくれた作品でした。

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