『THE BITCH』山口での上演
『THE BITCH』は2024年1月に山口でも上演されました。
演出してくださったのは、山口市在住の田坂航太郎さんという気鋭の演出家です。山口市では演劇が盛り上がっていました!
まさか作者が東京から観に来てしまうなんて思っていなかったと思うのですが(迷惑だったかも知れません、すみません)行けてよかったです。
田坂さんは北海道のご出身なのだそうで、作中の「寒さ」に惹かれたとのこと。なるほど、言われてみればラストのオーロラのシーンは極寒ですし、アリのシーンで大きく変わるまえまでの「ビッチ」は行き詰ると死を選んでしまう寒い(冷たい)死生観の持ち主でした。
「ビッチ」役(に限らずどの役もですが)台詞が膨大!田坂さんが演出してくださったバージョンでタイトルロールを演じてくださったのは、中野志保さんというかたで、ユニット・ピコの主宰もされている女優さんでした。
中野さんの才能には舌を巻きました!
役者陣も素晴らしかったのですが、田坂さんの演出ももちろん、色々となるほどな、と思いながら観させていただきました。
ところどことに山口らしさがあったのも印象的でした。
例えば鳥居。
私がイメージしていた鳥居は、西荻窪の商店街にある小さな鳥居でした。
東京に住んでいると、鳥居は街中に忽然と現れるものなので、BGMに海の音が流されていたのが不思議だったのですが、山口・島根を旅するうちに、東京の鳥居がそもそも不自然であることに気付きました 笑
田坂さんがどのような演出をされるのか気になっていたラストのオーロラのシーンはなんと渋谷のスクランブル交差点が大画面に映し出される演出。
オーロラの待機所でスコット隊についてのエピソードが語られますが、「色も形もみな違い、ひとつとして同じ光はありません」というラストのアナウンスを身近なイメージに寄せた結果が人混みだったのですね。
スクランブル交差点が日常である者としては、胸にせまるものがありました。
そして、このシーンで戯曲上は「ビッチ」よりも一足先に待機所を去る「薬局」が田坂演出では最後までビッチに寄り添っていたのも印象的でした。
この二役の関係性は、『THE BITCH』のなかでも物語のテコとなる重要な要素なので、そこに着目して演出してくださったのが嬉しかったです。「ビッチ」と「薬局」についてはまた記事を書こうと思います。
田坂さん、ユニット・ピコのみなさま、改めてどうもありがとうございました。