死にたいの因数分解

詩人、最果タヒ『好きの因数分解』を読んだ。いつもなら最初に長々と本の紹介をするようなテンションだけども、今日は違う、今日は感情が爆発している、この爆発した感情をなんと呼ぼうか、ああそれなら、死にたいが適当だと感じる。僕は死にたいのだ。奇しくもタヒというのはネットスラングで死を表してる、狙ったわけではないにしても、既に良くできた組み合わせになっていることに感謝しながら、死に体を自ら揺り起こして、死にたいを因数分解する。

最果タヒの文章を読むと死にたくなる、僕にはあんな風に感情が爆発した文を書けないと感じるから。カルピスの原液のように濃いエッセンスに塗れた短文は、さながら楽譜になっている。音符が見える、嘘ではなく誇張ではなく音符が見えるんだ。休符はもちろん、三連符や音の強弱を使いこなすその姿は、まさしく現代の吟遊詩人であり、現代の詩(うた)だとおもう。音節を作り上げ、たまに音階を飛び出しながら、でも一貫して淡々と同じことについて因数分解していく。いつだかの数学の先生が言っていたことを思い出すほどに。「数学って芸術なんだよ。頭がおかしいと思うだろ? でも俺は綺麗にまとまったり割れたりする数式は美しいと感じるんだよ」数学による数式の因数分解が芸術なら、言葉による好(-うし)きもまた芸術だ。とんでもねー感性を持ってやがる、勝てない、死にたい。

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