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第1回 学び続けるということ(後編)

板野 和彦 教授(教育学部 教育学科) 通信教育課程長(新任)

「学び続ける力」をテーマに、前編では板野教授ご自身の経験に基づいてお話いただきました。

 続く後編では、教員として通信教育課程の学生に教える立場から見た「学び続ける力」について語っていただきました。世代や立場を超えたさまざまな方が集い、研鑽を積んでいる現場のリアルなお話を通して、多様性あふれる学びの場としての通信教育課程の魅力を感じていただけると思います。


ここからは、本学の教授になられてからのお話をお聞かせください。2010年から12年間に渡って通信教育課程、通学課程の両方で多くの学生を指導されてこられた中で、どんな学生が印象に残っていますか。

  まず思い出すのは、着任してから2年後に通信制大学院の音楽(リトミック)の受講を希望する方が来られて、その担当になった時のことです。佐々木由喜子さんという方で、元々は九州で保育者養成に携わられており、しかも国立音楽大学で私の同級生でもありました。現在は、京都の池坊短期大学で教授をされています。

 リトミックの分野で博士号を取得したのは国内で私が第一号だったのですが、それに続く方が出てきてくれてとても嬉しかったです。現在、指導している学生にも博士号の取得をめざしている方がいます。いずれの方も、これまで教育者としてさまざまな研究を重ねてこられた方ばかりで、その一端に触れるたび「学び続ける力」の大きさを感じています。

教育者の研究の場としてもそうですが、人生100年時代と言われ、リカレント教育への関心が高まる今、学び直しの場としての通信教育課程についてどう思われますか。

 通学課程で学んでいる時は、どうしても勉強の大変さの方が大きく感じることもあると思います。しかし、社会人になってから通信教育課程や大学院に入ってみると、「勉強ってこんなに楽しいものだったのか」と、学ぶ喜びを感じることができます。私が担当する学生の方も口々にそうおっしゃっています。

 昔は大学までに勉強したことを活かして仕事をし、定年まで勤め上げてというのが日本では一般的でした。しかし今は、教育分野を含めて、あらゆる分野で変化のスピードが早く、常にレベルアップが求められています。そうなると大学までの知識では不十分になるわけです。いざ大学院で学び直そうとなっても、通信教育でないと仕事をしながら学ぶのは難しいのが現実です。そうした意味でも、通信教育の意義というのはますます大きくなっていると感じています。

いつの時代も変わらない、熱がこもった「スクーリング」風景(「教育学基礎演習1」)

働きながら学び続けたい方々の、通信制大学院に対するニーズの高まりを感じていらっしゃるわけですね。

  これから明星大学を受験してくれる方はもちろん、その他の通信制大学院で学ぼうという方も、仕事と両立しながらご自身の研究も進めたいという強い思いを感じます。そうした方が来てくださることにより、本学の大学院も年々進歩しています。

 研究の内容自体もそうですが、ご自身も学校で教えていたりして、すでにその道の専門家として歩まれている方も多く、全体のレベルを押し上げています。みなさん教育現場での課題を抱えてこられ、本学の教員からアドバイスを受けて「そういうことか!」と、ヒントを得られています。現場を持ちながら、研究も進める。この姿が本来のあるべき姿なのではないかと思います。

 ちなみに私が本学の大学院に入った頃は、修士で勉強したことがない方も多くて、研究計画書の書き方もわからないという感じでした。その反面、ほとばしる熱意を持った方が集まっていました。そうした点は今も変わらず、志のある若手の先生も加わっており、多様な人々が集う豊かな学びの場が構成されています。

板野教授のような教える側もそうですが、教わる側にも多様な方が集まることで学び続ける力を養う環境が整っているのでしょうね。

  確かに教える側、教わる側という側面もありますが、私がみなさんから教わることもたくさんあります。以前、70代後半くらいの方にリトミックの指導法を教授したことがありましたが、こちらが気づかないようなことを指摘していただいたこともあります。それは貴重な経験でした。世間でもよく言われることですが、「物事を始めるのに、遅すぎることはない」とあらためて思いました。

2020年度の修士論文発表会はオンラインでの開催

  環境面についてお伺いしましたが、その他の面で本学の通信教育課程の強みは何だとお考えですか。

制度面では、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、保育士の複数免許が取得できることです。 人的な面では、通学課程の学部で指導されている先生が、通信教育課程でも教えてくださっていることが大きいと思います。

 現場での悩みや課題についても理解されており、受講される方の想いに応えることができるからです。そうした面も含めて、教職員が親身になって手厚いケアをしているということは、自信を持ってお伝えできます。

オンラインスクーリング受講のための操作説明会は、毎回多くの学生が参加します

 また、昨今はオンラインでの授業対応も大きな強みのひとつと言えます。当初より通信教育課程は、仕事が忙しくても学び続けることができる環境づくりを前提に進めてきました。

 その流れの延長線上で、たとえコロナ禍という不測の事態であっても、スクーリングもハイブリッドで行うことができました。そして、来年以降も継続的に対応できる下地も整いました。オンラインの場合は、場所を問わないのも利点です。今年は北海道の端の方から受講された方もいましたし、学びの可能性というのは着実に広がっています。今回のテーマでもある「学び続ける力」をサポートしていく上でも、より良い環境をつくっていきたいと思っています。